【第267号】目標設定とモチベーション

1.目標設定の難しさ

 働く人を評価していくのに、目標を設定してもらい、その達成状況を評価することは大変効果的である。しかし、それがうまく機能していない企業が多い。それはなぜだろうか。ひとつには、適正な目標設定ができていないことがある。ある企業では、最初からあきらめてしまい、常に前年対比でしか目標を設定できていない。マーケットの変化、商品構成の変化、スキルの変化が反映されていないのである。また、目標設定のプロセスに問題がある企業も多い。トップダウンで決められてしまう、自分たちの意見が反映されない、などの理由で、深く考えずに目標を設定することが常態化してしまっている。“自分たち”の目標となっていないのである。

2.モチベーションとの関係

 目標が自分たちのものになっていないと、モチベーションが上がらない。「できなくても・・・」の理由付けができてしまうからである。「会社が勝手に決めたこと」「最初からできないとわかっていた」「何も知らない人間が決めた事」になってしまう。目標と達成状況と評価がリンクしない場合も問題が生じる。「やってもやらなくても同じ」という状況を生むからである。目標という第一ボタンがずれてしまうと、全てがずれてしまう。しかし、目標への納得感を大事にしている企業は少ない。評価で調整しようとするからだ。では、本当に評価で調整できているのか。目標がしっかり作れていない企業が、評価の時に納得の得られる調整ができることはない。マネジメント能力と深く結びついているからである。

3.達成感と評価

 自信をつけさせ、成長を促していくためにも、小さな達成感味合わせる必要がある。しかし、目標設定がうまくいっていないと、達成感も得られにくい。身の丈にあっていないと、「やれて当たり前」「できなくて当たり前」の“当たり前”が出てきてしまう。本人の実感が正しくないと、評価とのリンクが図れない。「達成しているのに低い評価?」「できていないのに高い評価?」となってしまう。結局、目標・達成・評価の3ステップが全てずれてしまうのである。この状況では、管理職のマネジメント能力も向上しない。当然、社員の納得感は得られない。日常業務のマンネリ化を生んだり、組織の不活性化もここから始まる。正しい目標の設定には、前年の反省とマーケットの把握、お客さまの状況の正しい認識が必要となる。管理職を伸ばす絶好の機会と捉えてもらいたい。