【第264号】知的好奇心を生かしているか

1.“空白”を埋める機能

 この時期、新入社員は覚えることが多くて日々苦労しているかもしれない。不安を感じているかもしれない。失敗を恐れずにチャレンジすることが大事である。経験に勝る学習方法はない。身体で覚えたものは忘れない。しかし、脳が意識せずとも働く機能を活用することも必要である。人間の脳は、空白が生まれるとそれを埋めようとする機能が働く。それが「知らない事を知ろうとする」好奇心でもある。それを生かしているだろうか。「こんなこと聞いたらまずいかな」「こんな質問したら馬鹿にされるかな」と遠慮する必要はない。知らないことにストレスを感じなくなると、知ろうとする範囲が段々と狭くなる。「知らなくて当たり前」と放置していては、成長はない。

2.考える力とは

 知ろうとするから、考えるようになる。「なぜなんだろう」「どうしてなんだろう」と常に考える。「よくわからないけど、こんなもんさ」と疑問に思わないと、自分がミスをしていることにも気づかなくなる。他人の失敗もわからない。考えないから、改善もない。成長のない状態、つまり退化していることになる。
 このコラムでも何度も指摘しているが、この「考える力」がないと個人だけでなく、組織が衰弱してしまう。逆に、一人一人が考える組織は、規模に関わらず、競争力が強く、業績が良い。組織としての機動力も高く、商品開発力がある。経営者からの権限委譲が進む土壌が出来上がる。逆に言えば、考える組織になっていないと、権限委譲は進まない。思考停止の幹部、組織の会社は要チェックである。

3.自分自身に質問する

 「空白を埋める機能を使う」「常に考える」とともに、自分自身に質問するクセをつける。人間の頭脳は、質問された答えを必死になって探す機能も持っている。偉大な発明が、偶然見つけられたり、ひらめいたりしたように言われるが、これも発明家が常に自分の脳に「問いかけている」から、生まれるのである。必死に探し答えが見つかっただけなのである。皆さんも「ひらめいた」時があると思う。それは、その答えの質問を過去にしていたからなのである。「幸運の女神は前髪しかない」とも言われる。考えている暇はない、ということだが、準備が大事とも言える。常に意識させていれば、それに気づく。アイデアのアンテナもそうだ。部屋の中にある「青い物」を探してください、と言って探してもらったあと、目をつぶってもらって「赤い物」は幾つありましたか?と聞いてもほとんど出ないのは、いい例である。