【第256号】マネジメントの工夫

1.合議制と個別折衝

 マネジメントが上手くいっていない、噛み合っていないケースで見られるのが、トップが幹部や関係者と個別で折衝や根回しをした方がいいものと、合議で決めた方がいいものを混同しているケースである。ある企業の幹部会では、大きな機械への投資だけでなく、細かい消耗品の購入まで了承事項にあがっていたりする。その一方で、赤字工事の精査や、受注時の利益率が基準を下回っている案件のチェックなどが疎かになっていたりする。
 こうなると何が起こるか。都合の悪いものは、社内の関係者による個別折衝で終わらそうとする。すると組織としての牽制作用が効かなくなる。また、なんでも合議にしてしまうと責任の所在が曖昧になったり、総論賛成各論反対になり、会議の外で不満が出たりする。

2.メッセージの発信方法

 トップのメッセージは上から目線になりがちである。発信しているトップはそう思っていない。しかし、社員の感じ方は違うことが多い。常に社員の感じ方を意識しておく必要がある。特に創業者ではなく、2代目、3代目は、苦労を分かち合えていないと感じる社員も多い。そんなつもりはなくても誤解されやすい。役員報酬の金額や、経費の使い方、すべて「李下に冠を正さず」でなければならない。
 常に受け止めてあげる姿勢が必要である。「社員は無能である」「言うことをきいてくれない」「成長しない」などの不平不満を抱いていると、社員は敏感に感じる。「社長は自分たちのことを信じてくれていないな」と。信頼されていないと感じると、社員は協力しようとはしないし、モチベーションも上がらない。

3.根回し

 根回しも重要である。特にプレッシャーのかかるポジションの幹部や社員には、なぜ、そのポジションを任じたのか、個別で説明する必要がある。トップは時として立場上、厳しいことを言わなければならない。重要なポジションについている社員には、周りから見ても「冷たく」「辛く」当たっているように見えてしまう。
 逆に、そういうポジションの社員は、トップへの根回しが重要となる。トップの期待に答えると同時に、味方に付けておかなければならない。
 お互いにこういったことができていないせいで、すれ違いが起きてしまい、優秀な社員を失う結果になったり、キャリアに傷がつくことになったり、モチベーションを低下させ、成果が出なかったりする。
 すべてを公的の場で決定する、話しをするでは困るし、すべてを個別折衝で決定する、でも困る。またそれが逆転しまうと逆効果になる。しっかりと見極めることが重要なのである。