【第253号】最終的には人材

1.どんな戦略を組んでも

 どんなに素晴らしい事業戦略を組み上げても、一体それを誰が実行するのか。様々な企業の事業戦略を策定する場合、そこが一番の悩み所になる。多くの企業が成長の過程で実際にやってきた事業の構築は、創業者もしくは社長がひとりで行ってきた。そして、主な担当者は、社長とその側近が分担することで足りた。しかし、これからは、本業だけでない事業にも取り組んでいったり、本業も進化させていく必要がある。後継者だけでは、カバーできない専門的な領域も出てくる。いろいろとアイデアを出しても、結局、実施しないで終わるのは、この「誰」の解決が図れないためである。筆者が実際に様々な企業と関わっていて感じるのは、この「誰」の部分の大切さである。

2.人・モノ・金の時間軸

 経営資源と呼ばれるものが「人・モノ・金」であるが、お金は、ある一定の額までならどんな企業でも銀行から借りてきて用意することができる。お金が用意できれば、機械を購入したり、材料を仕入れたりも可能である。ここまでは、どんな戦略を構築しようと、対応可能な分野である。つまり、時間軸で考えれば、意思と実行と成果のタイムラグはあまりない。しかし、人については、違う。やろうとしたそのタイミングで人材が揃っていなければ、対応できない。
 ここで問題になるのは、人は直ぐに必要な能力を用意することができない、ということである。専門性にしても、マネジメント能力にしても身に付けるには、時間がかかる。時間軸で考えると、人は、他の2つの経営資源と比較して、長い時間が必要になる。

3.人事戦略と組織戦略

 将来、どんな人材が必要になるのか。それを十分に検討している企業は少ない。多くが、対処療法的に、不足人材を補充する形で採用している。人材育成についても同様である。本来は、将来の必要な人材をどう採用して育てていくのか、を検討すべきなのである。それがあって初めて、組織をどのように構築するのかが議論できる。
 「組織は戦略に従う」のだが、組織を構成する人材が揃わなければ、戦略の推進を支えていく組織の構築はおぼつかない。やる人がいない組織は、結局、兼務が増え、業務の効率を低下させる。実行力のパワーダウンは、業績に直結してしまう。
 人材は、すぐには育成できない、というのはわかっているのに、中々、その育成に投資できていない。人を育てるのには、時間とお金がかかると再認識する必要がある。