【第238号】感情に寄り添うということ

1.社員の気持ちがわかっているだろうか

 コミュニケーションの課題は永遠である。誰もが課題を抱え、良くしたいと思っている。しかし、改善が進まない。なぜなのか。ここ数年は「傾聴」について、語られることも増え、聴くことの重要性は理解が進んできたように感じる。「聞く」ではなく、「聴く」が重要であるという知識を持っている幹部社員は増えた。実践面については、まだまだかもしれないが、知っている人がやろうとしている姿勢を示しているのに、問題はなくならない。なぜ、聴くことができるようになっても、社員の気持ちが理解できていないように感じるのか。なぜ、不安が残るのか。気持ちがわかるためには、しっかりと向き合うことが必要であり、受け止める姿勢が確立されていないとできない。

2.なぜ寄り添えないのか

 向き合えていない、受け止められていないとすれば、どうしてなのか。それは寄り添えていないからなのである。本当にその人の気持ちを理解していると言えるだろうか。わかっていると言えるのだろうか。報連相の問題も同じであるが、日本語を話しているから、理解しあえる、わからないことはない、と思い込んでいるのである。それぞれの解釈が違うし、同じ「わかりました」でも、トーンによっては、わかっていないと感じることもあるだろう。
 どうしても、言葉からの解釈が優先されてしまう。「彼はこう言ったから大丈夫だ」「彼女は自分でやると言ったんだ」など、本人が言ったから、ということが様々なケースで言い訳になる。しかし、その言葉の裏にある、行間に含まれる気持ち(感情)を見ようとしていないのである。「わかろう」ではなく、「聴く」ことが優先されてしまっている。ここがコミュニケーションの難しいところでもある。

3.分かり合えると信じる

 人の表情は豊かである。喜怒哀楽が必ずどこかに現れる。まゆ、目、ほお、鼻、唇、手、など身体のいろいろなところに出てくる。それをしっかりと観察することである。
 実際に、筆者があるセミナーでハミングだけで会話をするというワークを経験したときに、感情の動きを見ることができた。観察力は、訓練すれば向上するのである。
 また、「聴く」姿勢には、相手を全面的に信頼すること、100%分かり合えると信じることが重要である。相手の言うことを受け止める準備ができていないと、「聴く」は形だけになり「聞く」になってしまう。目で表情を観察して、心で受け止めるのが「聴く」である。