【第236号】改めて人材育成の大切さ

1.人は直ぐに育たない

 同じ幹部人材の育成でも、ここ最近痛感するのは、人は直ぐに育たないということである。スクール形式のセミナー(複数回のシリーズもの)でないと1日で終わってしまう研修もある中、派遣すれば人が育つと思うには間違いである。確かに1回のセミナーでも気付きはあるし、学ぶこともあるだろう。しかし、それを実践して、身につけていくには時間がかかる。習慣化するには100日連続して実践することが必要と言われる。それを途中で止めてしまう、と身につかない。つまり参加してからが重要なのである。何度も繰り返して、習慣化してそれが能力となって成長していく。その過程を考えれば、直ぐには成長しないことがわかる。

2.人の差がマネジメントの差

 同じ課長クラス、部長クラスでも会社によって、その保有能力は大きく違う。どれだけ教育を受けてきたかも違うし、求められてきた役割も違う。当然、会社の規模も違えば、マネジメントの範囲も違う。しかし、社長を補佐して会社の方向性を誤らないようにし、部下を巻き込みながら、成果を上げていく役割には変わりはない。
 筆者がプロジェクトに参加していっしょになってビジョンや方針を彼らと一緒につくることがあるが、その討議の内容や状況をみていると、本当に「人の差」が出る。戦略や戦術など、普段考えていないと議論についていけない。
 何で戦うのか、どこで戦うのか、は日常業務に埋没している状況では、考えられない。組織をどう組み立てればいいのか、どの階層・機能に人材の課題があるのか、マネジメントシステムに問題があるのか、経営という視点を持っていないとビジョンや方針が他人事のようなもになってします。

3.人を育てられる人を育てる

 企業が継続的に人材を育成していく仕組みが重要になる。最終的には「人を育てられる人」を育成していく。いつまでも中途採用に戦力強化を頼っているようでは、社長分身は作れない。ましてや企業のDNAを生かして企業文化を育んでいくことは難しい。
 まずはどのように人を育成するのか。外部機関をどのように活用していくのか、内部での研修をどう充実されていくのか、という検討が必要になる。そして、それを運用できる人を作っていかなくてはならない。
 「人材が一番」と言いながら、採用も人任せ、育成も人任せで、きめ細かなケアができる人事など実現しない。自らの思いで採用し、育成するから、社員の悩みに向き合えるのである。