【第211号】人事考課の難しさ

1.評価項目ごとの評価

 ここ数ヶ月で新たに人事考課制度を構築した会社で、本番稼動となったところが数社あり、そこで改めて人事考課の難しさを痛感した。
 まずは、人事考課表の評価項目ごとの評価の難しさである。やはり人物全体で評価してしまう。頑張っている人、そうでない人、言うことをきかない人、何度言っても変わらない人、など。営業担当者であれば、業績数値に引きずられる。なので、評価理由を聞くと、責任性であっても、積極性であっても、協調性であってもみんな似たよう理由になってしまう。「彼はお客様の評価も高く…」「営業成績も抜群で…」。でも、それと責任性とはどういう関係なの?積極的な言動とはどこなの?と質問すると、はっきりと答えられない。“印象”で評価しているからである。

2.客観的なシビアさ

 また、甘辛の調整会議を実施していると、絶対評価での評価が対象者全員5段階評価の3以上だったとする。相対評価にしていくためには、「1」「2」の評価もつけなければならない。ところが、これがなかなか決まらない。自分の部下を低い評価にするのは、辛いことだが、客観的に評価できなければ、正しい部下育成などできない。相対評価は、比べる集団の中での「順位付け」なのだから、一位がいれば最下位がある。可哀想とか忍びない、という感情は排除しなければならない。
 部下を正しく見ている管理職は、やはりシビアな評価をしている。ダメなものはダメ、良いものは良いと、理由を明確にして説明できる。甘い評価ばかりしているのでは、部下は育たない。

3.記録をつける

 結局、シビアな評価ができないのは、フィードバック(最終の評価結果を伝える)面談の時、説明して納得してもらう自信がないからである。「なんとなく3」と評価したものが、甘辛調整会議で順位付けをされたら、「気が付いたら1」になっている可能性もある。なんで「1」の評価になったのか、会議に出席していた管理職自体が理解できていない。当然、説明などできる訳がないのである。
 そうならないためにも、日頃から、部下とのコミュニケーションの内容、特に指示した事項、そして、それに対してのレスポンスを記録にとっておくことである。スピードはどうだったのか、正確性はどうだったのか、検討内容はどうだったのか、判断基準はどうだったのか、などを記録しておけば、人事考課の時に迷うことはないし、当然甘辛の調整会議時に迷うこともない。人事考課をできるだけ正確に、ブレないようにしていくためにも、 しっかりと記録をつけておくことが重要なのである。