【第156号】2012年を振り返って(2013年に期待すること)

1. 震災の傷がいえないまま

 東日本大震災から1年が経過し、2年目に突入した今年、復興の足並みは加速するどころか停滞してしまった面がある。用地確保、資材確保、人員確保がままならず、予算がついていても執行されないところが出てきてしまった。
 原発にしても、終息宣言は出されたが、避難している方々は未だに32万人(復興庁のHPより12月12日現在)にのぼり、除染活動を続けているものの、除染している側から放射能の値が上昇している地域もある。農業にしても漁業にしても、震災前のような活況を取り戻せていないところもある。がれき処理の問題も、広域処理にこだわるあまり、進展していない。一部、震災特需があったものの、全体的には回復途上である。
 リスクマネジメントの重要性はますます高まっていく。災害だけでなく、景気変動へのリスクも要注意である。

2. 浮上しない経済

 消費増税やTPP参加など、日本経済へのインパクトが決して軽くない問題が控えている状況だが、それに備えができているとは言えない。今のままでは、景気の失速リスクの方が高い。2012年は、まだかまだかと言っているうちに終わってしまった感が強い。
 政権が変わって、為替や株価は期待をこめて変動しているが、期待を裏切った時の反動が怖い。
 企業は環境適応業である。これだけ先行きの変化が激しくなると予測される今、硬直化した体質では取り残されてしまう。また、従来の延長線上の考え方でも変化についていけない。デフレ脱却が進むかどうかはまだまだ不明である。将来への不安が取り除かれなければ、消費が進まず物価が上昇する可能性は低くなる。給与への転化が進むことも条件となる。

3. 生活スタイルの変化は進む

 スマートフォンの普及で、ビジネスの世界も個人のライフスタイルも大きく変化し始めている。よりコンパクトにニーズが吸い上げられ、個人も様々な情報を発信・吸収することができるようになってきている。
 知らない人とのネットワークがあっという間に築けるようになり、企業はファンがファンを呼ぶ構造を構築できる。ネットを通じて物を購入することが当たり前になりつつあり、世の中の店舗は物を買う場所から巨大なショールーム化しているのである。
 来年もこの流れは変わらず、加速していくことになる。携帯端末の小型化もあり、競争は激化する。長いこと無理だと思われていたことが、気が付くと簡単にできるようになる時代である。常に制約条件をなくして考えることが重要となる。