【第155号】経営者の言葉

1. 部下への姿勢が反映される

 上司の言葉遣いで部下にパワハラをしてしまうことが注目されているが、見過ごされがちなのが、経営者の経営幹部に対する言葉遣いである。
 企業のトップは大きな責任を負っている。取引先へ迷惑をかけない、従業員の雇用や生活を守る、そのために業績を上げる、利益を確保することが求められる。当然、業績数値には厳しくなる。売上が伸びない、利益が出ない、となると幹部に対する姿勢も厳しくなる。それは当然である。しかし、トップだから、どんな言葉遣いをしてもいいとは限らない。部下はその言葉遣いで、自分への「思い」を推し量る。どれだけ大事にされているのか、どれだけ評価されているのか、どれだけ信用されているのか。そして、トップの幹部に対する姿勢をその下の一般社員は息を殺して見守っている。それが、一般社員のモラールに大きな影響を与える。「えらくなると大変だ」「あんなに優秀な人も、幹部になると“バカ”“無能”呼ばわりされてしまうのか」と部下は萎縮する。

2. 大事な「第一声」

 電話報告などへの対応も重要である。報・連・相が集まる上司は、聞き上手である。必ず第一声は「ご苦労さん」である。そして報告の終了時には「ありがとう」となる。報告者は、どんな報告でもためらわずに報告するようになる。これが電話するなり、「どうなっているんだ」「言っていることがわからない」など怒鳴られ、報告どころではなくなってしまうと、報告者の気持ちも萎えてしまう。
 こうなるとトップの顔色を見て、報告するようになる。タイムリーに報告が入らない原因である。
 報告を受ける側に問題が発生すると、報告する側は「思考停止」状態となる。結局「何を言っても否定される」「トップは自分で決めないと満足しない」と部下が思えば、考えなくなるのである。

3. 人格を問われないように

 言葉遣いはイコール「人格」である。言葉は、その人そのものである。時には、厳しい言葉で指摘することも必要である。しかし、人格を否定するような言葉はビジネスの世界では不要である。お互いに気持ちよく仕事をしなくてはならない。相手(部下)の人格を否定することは、結局自分の人格を問われることになる。
 「経営者だから仕方ない」と部下はあきらめる。解決してくれる人は社内にはいないことが多い。経営者が「裸の王様」になっていく悪いパターンである。悪い報告があがらなくなる、耳に痛いことを誰も言わなくなる、という風土になる。優秀な幹部から辞めていくことにもなりかねない。
 経営者の言葉、重みがあるがゆえに大切なのである。