【第154号】社会に出て何をしたいのか

1. いつまでも続く不一致

 10月に新潟県内の企業を対象に経済アンケートを実施した。いくつかの質問項目の中に、「不足している人材は?」というものがあった。業種、規模別に若干の差はあるものの、3社に1社が若手人材と回答したのである。
 就職氷河期と言われ、内定率が低迷しているにも関わらず、多くの企業が若手人材を欲しているのである。新聞報道などで、学卒の「大手企業志向」は強まっているということが言われているが、やはり中堅・中小企業は採用難が続いているという状況である。これも12月の日経新聞に掲載されていたが、リクルートワークス社の調査では、13年春卒の求人倍率は、5,000人以上の企業では、0.60倍、300人未満3.27倍となっており、データ上でもそれが裏づけられている。

2. 入った会社の位置づけ

 また退職の時期もまちまちになってきている。会社と合わなかったという理由で、1年以内に辞めるのは仕方ないにしても、慣れてきたな、と感じ始めた3年目、4年目で辞める社員も出てきているようである。
 そういう社員にとって、入社した会社は何だったのだろうか。何をしたかったのだろうか。「就職しないと世間体が悪いから」「親から職につけと言われたから」という理由では困る。近年は、就職しても親と同居している場合が多い。働く動機が希薄になってきている理由である。マズローの欲求段階ではないが、本当は「生きるため」に働くはずである。それが、30歳・40歳を過ぎて、結婚したときにようやく「生きるため」になる。20代はその欲求段階の最高位の「自己実現」になってしまっていて、どうも逆転現象が起きているのが、問題なのではないだろうか。

3. 自分は何ができる社員なのか

 好きなことをすることを求め、彷徨うことより、まず自分自身のスキルを上げることが重要である。20代の体力があり、記憶力もいい時代であれば、何に取り組んでも財産になっていく。取り組む姿勢さえ、真摯で真剣であれば、無駄なことなどない。その経験は必ずあとになって役に立つ。
 もう一度、自分が何ができる社員なのかをじっくり振り返る必要がある。会社という仕組みや組織を生かして「社会に対してどのような貢献ができている」のか。本当に能力を発揮できているのだろうか。
 世の中が悪い、景気が悪い、と他人のせいにしていても人生は良くならない。若手への指導は、まず自分を見つめさせることから始めることが重要となる(自分をじっくり見ることは辛いことでもあるが)。