【第143号】高齢者人材の活用

1. 何歳からが高齢者?

 企業における定年はどんどんと延びる傾向にある。このままいけば65歳定年は当たり前になってくるだろう。これまでは、60歳以上の雇用延長に「能力」における制限を設けることができたが、今後は不可能になる。本人がダメと自覚しない限り、65歳まで雇用が続くことになる。
 それでは、何歳からが“本当の”高齢者なのだろうか。これからは、戸籍年齢で判断するのは意味がなくなってくる。能力があれば、何歳であっても企業にとっては必要な人材。逆に能力がなければ(マッチしていなければ)、何歳であっても企業にとっては不必要な人材だからである。
 その分岐点は、「好奇心」や「向上心」を失った時点といえる。新しいものに興味を持つ、それを習得しようと努力する、そういった行為がなくなった時点で本当の意味の「老化」が始まるからだ。

2. アイチエイジングの効果

 流行のアンチエイジングも肉体面ばかりではない。もちろん肉体面も今は個人差が大きい。筆者も週に1回はスポーツジムに通うようにしているが、そこで見かける人たちは本当にストイックである。高齢と思われる方でも、ランニング、マシントレーニングなどをかなり負荷をかけて楽々こなす。
 精神面でも、同様である。つい先日iPhone5が発売されたが、60歳台の予約者もかなりいたようである。60歳以上の方を対象としたスマートフォンの使い方教室もある。
 こうなると、そういうものに一切興味を持たず、時代から取り残されているような若者もいる中では、戸籍年齢などあまり意味を成していないと感じるのである。それよりも、“自己管理”でコントロールできる肉体年齢や精神年齢の方が重要となってきている。

3. 若いころからの過ごし方が重要に

 「50歳台だから体力が低下してきている」、「60歳目前だから新しいものにはついていけない」なんていう常識も通用しなくなってきている。
 ベテラン社員にはベテラン社員としてのノウハウの蓄積がある。また、豊富な人脈がある。それをいかに後継の育成に繋げながら会社業績に貢献してもらうか。そしてそれを評価する仕組みの構築が必要となる。と同時に、それは30歳台、40歳台の過ごし方で決まってしまう。「ノウハウの蓄積が少ない」、「人脈もない」、「人に語れる経験もしていない」では、それこそ生き残れる場所がなくなってしまう。
 柔軟な発想ができてこそ、ベテランとしての味が生まれる。是非、中堅社員も他人事と思わずに自分の将来を考えておいて欲しい。