【第137号】前例踏襲主義

1. 雛形がないとできない?

 最近のビジネスマンは雛形がないとビジネス文書が作成できなくなってきている。はっきりと「雛形がないとできません」と回答する社員もいるぐらいなので深刻である。
 筆者の入社1~2年目は前例がないことづくしであった。ちょうど新システム構築の最中であったこと、前担当者が3ヶ月の引継ぎ期間を終えて、異動になったことなどからである。新システムであるため、作業の進め方から変えていかなくてはならない。規定類の見直し、帳票類の見直しなど相談はできても、誰も決めてくれない。任されていると割り切って進めていった。基本は考え方である。「どうすればいいのか」なんて考え方では、答えは出ない。「どうすれば使いやすいのか」「どうすればわかりやすいのか」という相手目線の具体的な考え方が必要である。
 ビジネス文書でも、ルールは決まっているので、あとはどうしたら用件が伝わるのか、わかりやすいのか、が重要なのである。

2. 誰もやったことないこと

 誰も経験したことがない、挑戦したことがない、ということは日常普通にある。特に変わったことである必要もない。発想を変えれば、いくらでも出てくるのである。また、時代が変化し、環境も変化する。2~3年前は無理だった、ダメだったものも、可能になる場合がある。携帯電話がない時代、メールがない時代には考えられなかったことが今はどんどん可能になっているではないか。
 未知のことに挑戦していくことは勇気がいるかもしれない。しかし、それは不可能とイコールではない。どんなことも誰かが最初にやっているから、後に続く人がいるのである。やったことがない、は「やってはダメだ」、ともイコールとは限らない。

3. 過去の延長線上にない答え

 業績が低迷している企業、成長が止まっている社員、いずれも過去の延長線上に答えを求めている。過去の成功は未来の成功を保証しない。当然、成長も保証されない。良く言われるイノベーションとは、自分の成功を自分自身が新たなやり方で壊して、新しい領域を作っていくことである。それが革新なのである。
 中期のビジョンも経営方針も過去の延長線上になってはいないだろうか。変化のない業界はない。変化のないマーケットもない。変わっていかなくては取り残されるだけである。コストダウンが数%レベルでは、コスト構造の変化が起きないのと同じである。ちょっとだけの変化では、何も変わらない。
 進むレールを新しいものに変えて、何に取り組むのか。やったことがないことに挑戦して欲しい。