【第135号】危機感と真剣度

1. 自分のものとして考える

 危機感というものは、自分のものとして捉えて初めて効果が出る。「人ごと」と考えていると、ちっとも行動は変わらない。「うちの社員は危機意識が足らなくて困る」と嘆かれる社長が多いが、企業経営の危機感は経営幹部が持つもの、と社員が考えているからである。
 ひとつには、自分の会社を取り巻く変化に興味を持っていないことがある。マーケットの変化、顧客の変化などに鈍感である。新聞も読まない、ニュースも見ないでは、真実を伝えているかどうかは別として、変化を知りようがない。
 もうひとつには、会社の業績などがオープンになっていないため、給与が上がらない理由や賞与が出ない理由、逆に給与が上がった理由や賞与が増えた理由が理解できないためである。景気が悪くても、良くても給与の増減は関係ない、賞与もなんとなく出ている状況である。

2. 自分としての解決策を持つ

 自分のものとして捉えられなくても、自分としての解決策を持つことで当事者意識を持つことができる。「自分なら、こうして解決する」というやり方である。
 自分としての解決策を持つためには、現状をしっかりと認識する必要がある。すると、環境の変化であったり、社内で不足しているもの、そして業績の課題などに目が行くようになる。
 毎年、経営方針を策定している幹部陣にはその意識があっても、中堅クラスにはほとんどない。マーケットの変化については、ほとんど考えていないことが多い。日常業務に埋没していては、危機感を持つことができない。突然、取引が中止になる。発注がなくなる、なんてことに直面して初めて実感するのである。

3. 突破後のイメージがあるか

 危機を突破した先、どのような変化が生まれるのか。それをしっかりとイメージできていないと、危機を克服できないし、正しい解決策になっていない可能性が高い。
 いろいろな場面で指摘するが、これだけ環境が変化しているのだから、これまでの延長線上に答えはないのである。新聞やニュースを見ていても、世の中の変化はすさまじい。1年後の状況は政治も経済も社会情勢もそして、世界情勢も不透明感を増すばかりである。自分たちだけが、去年と同じことをやっていて、今の危機を脱することができるはずがない。より具体的な解決策を持たなければ、イメージ(像)としては結実しない。
 どうやって、どのように、いつまでに、そして誰が担当するのか。危機感のない企業は、リスクが増大する現代の世の中では、救命筏のない船のような存在である。