【第134号】いじめ問題を考える

1. 自分たちの使命とは

 今回のいじめ問題は、当事者だけでなく「大人の問題」として我々全員が考えなくてはならないテーマである。メンタルヘルスの問題でも、パワハラ・セクハラなどのハラスメントでも、構造はいじめと同じである。
 学校においては、子供を育成していくことが教師の役割である。社会においては、顧客のためにいい商品・サービスを提供することである。それを忘れてはいないだろうか。教師は、日常の業務に終われ、いじめという手間のかかる問題に真剣に向き合うことを避ける。「いじめの撲滅」を言われているからいじめを隠す。企業でも同じことが起こる。日常業務優先で、部下の悩みに気づけない。「クレームゼロ」や「ミスゼロ」を言われているから、それらを隠す。

2. 誰の目線が重要か

 学校でも会社でも本来、一番の優先順位であるものが忘れ去られている。学校では「子供の目線」である。「いじめには気づきませんでした」「アンケートに書かれていることを見逃しました」「自殺といじめに関連性はありませんでした」などの大人の発言が伝えられている。その真偽のほどはわからないが、いじめの現場の近くにいた生徒たちはその発言をどのように聞いているだろうか。真実でなかった場合、どれだけ傷つけているだろうか。
 会社でのハラスメントも同様である。当事者である上司は気づいていないことが多い。しかし、同僚・部下はその姿をどのように見ているだろうか。
 規律を乱すチームメイトを律することができず、逆にそれを助長してしまう。そして上を見てばかりいて、自分の保身が第一である・・・これでは組織は崩壊してしまう。

3. 救いはどこに

 今回は裁判になったから公になった。泣き寝入りしているケースは多いはずである。会社における人間関係で悩んで、解決できなかったケースも同様なのではないだろうか。
 先日、コーチング研修をある企業で実施したが、質疑応答の時間が足りないぐらいであった。それだけ、様々な問題が現場で発生しているということである。
 もう一度自分たちの使命を振り返るべきである。顧客や顧客と向き合っている現場の社員の気持ちを理解できずに、会社を成長させていくことができるだろうか。社員のSOSに気づく仕組みは会社にあるだろうか。数年一度は社員アンケートを実施し、社員の声に耳を傾けることが必要である。
 生徒は3年しか同じところに留まらない。しかし、社員は数十年同じ職場に留まる。複雑になっている人間関係に配慮していくことが求められている。