【第130号】“雇用のミスマッチ”というミスマッチ

1. 学生と企業のミスマッチは

 就職したい側の学生の希望はやはり景気が悪いことを反映して、公務員や大企業などが就職したい先としては人気。一方、採用したい側の希望は、大企業であれ、中小企業であれ、優秀な人材が欲しいと思っている。応募の段階で、大きく差がついており、中小企業は人が欲しくても、採用できない、という状況も発生している。
 採用ノウハウでも大きく差がついている。大企業は優秀な学生を囲い込むのがうまい。知名度を生かした採用活動ができるからだ。一方、中小企業は就職氷河期と言われても、大卒の学生が説明会にも来てくれない。存在を知らないこともあるが、親の不安を払拭できないからだ。「そんな聞いたこともない小さな会社に入ってつぶれたらどうするんだ」
 しかし、そういっていた大手企業にいた親もリストラされる時代になった。

2. 活躍フィールド

 多くの中小・中堅企業をご支援してきて感じることは、大手企業の幹部に登りつめる人は別として、活躍のフィールドは大手も中小・中堅も変わらないということである。
 大手企業は分業が進んでいるので、守備範囲は狭いかもしれないが、奥深いものがある。中小・中堅はそこそこの守備範囲と奥深さが求められる。
 中小であっても海外に出る時代である(語学堪能な若手社員が社長の右腕となって活躍している会社もある)。前例や慣習にとらわれない面も大手より中小・中堅の方が強い。
 倒産リスクも大手だから少ない、中小・中堅だから多いという時代ではなくなった。中小で能力を磨けば、独立だってできるし、大手への転職も可能である。逆に、大手でも自分を鍛えてノウハウを身に付けていなければ、“元○○”という肩書きだけで転職できるとは限らない。

3. 必要スキル

 大手だから必要なスキルが高いか、というとそういうことでもない。まあ、英会話の能力などは大手は入社時から高いハードルを用意している企業もあるが。
 大手、中小・中堅に限らず、今、一番求められているのは、「考える力」である。そこは共通しているスキルとなる。出身大学で受験というフィルターから記憶力の優劣はわかるが、考える力は学歴に関係ない。学生と企業のアンマッチは将来求める人生設計に見える。安定した生活を送りたい、ということである。その「安定した神話」も崩れつつある。中小・中堅企業も無いものねだりするより、海外の意欲ある学生を採用するところが増えつつある。となりの大学の学生がライバルなんて思っているミスマッチも起こり始めている。