【第116号】マレーシア企業視察②

1.マレーシアのイメージ

 町並みはきれいであると言っていい。地震がない(と言われている)ので、斬新なデザインの高層建築が目立つ。あちらこちらに建設用クレーンが立ち、開発が盛んなことがわかる。
 様々な人種の人々とすれ違う。みんなお洒落で、所得水準の高さを伺わせる。PCや携帯端末、カメラ(カメラ売り場の多さが目立った)などの売り場は若者で混雑している。兎に角、活気がある。マレーシアの人々は3Kの職場を嫌い、サービス業につくのが人気とのこと(もちろん公務員も人気らしいが)。
 医療面や教育面での国のサポートも充実している。基本的には国営なので、無料なのだ。もちろん、富裕層向けのサービスを行っているところもある。ただ、これが国民の勤勉性を奪っているとの指摘もある。危機感がないのである。仕事はあるし、将来に対する不安も少ない。食べ物に困ることはないし、教育、医療もタダである。地元の人に言わせるとマレーシアには餓死する人はいない、とのこと。

2.進出の可能性と課題

 そんなマレーシアという国に日本の企業が進出していける可能性はどうなのだろうか。確かに賃金の上昇はある。元々東南アジアでは水準の高い国である。各種統計資料から見ると、ワーカーの賃金は中国に並びつつある。ベトナムの2.5倍、タイやフィリピンと同じぐらいである(国内格差があるので、平均値で比較するのは難しいが)。ただ、国民1人当のGDPでみると、中国やタイの2倍近く、ベトナムの7倍近くにもなる。
 自動車の保有台数も人口当たりで比較すると韓国並みに普及している(ベトナムや中国の10倍レベル)。
 また石油や天然ガスが豊富なため、電力料金も安かったが、ここにきて産業が活性化するにつれ、需要が高まり、料金の上昇が始まっている。
 しかし、中小企業が悩むローカル人材のレベルは高いし、困る言語の面でも英語が通じるというのは強みになる。治安も安定しており、資本における規制が緩いということもメリットとなる。
 製造拠点というだけでなく、ASEANという巨大市場をバックに販売拠点というメリットもある。
 労務制度などは、日本のものをそのまま適用しても大丈夫ではあるが、地元の特性などを加味して運用しているようである。他民族なので、宗教や民族としての特色もあり、食事や休憩時間などの対応も必要である。
 課題がないわけではないが、進出対象としての魅力は十分にあるように感じる。