【第115号】マレーシア企業視察①

1. 意外なマレーシアの素顔

 丁度、このコラムを執筆しているタイミングでマレーシアに企業視察に行ってきたので、そこで感じたことを中心にレポートを書きたいと思う。
 あまり日系企業の進出先として名前が上がらないことが多い。中国、タイ、ベトナム、インドネシアが主なところではないだろうか。しかし、びっくりしたのは、所得水準も高く、教育水準も同様であること。また、インフラ整備のレベルも高かった。
 移動は鉄道もバスも整備されているが、多くは車なので、やはり通勤ラッシュが起こる。走っている車はまちまち。日本車も多く走っており、トヨタ、ホンダが目に付く。タクシーなどは国産車が中心。
 マハティール元首相政権下での「ルック・イースト政策」は有名だが、親日国家ということがいたるところで感じられる。マレーシアの玄関口であるクアラ・ルンプール国際空港は故黒川紀章氏の設計であるし、鉄道の駅なども黒川氏の設計のものが幾つもある。
 マレーシアは様々な人種がうまく融合して生活している国でもある(多少、ブミプトラ政策などを生んだ民族間の対立が無くなっているわけではないが)。国民の人口構成がそのまま企業における人種の構成になっているケースが多いようである。

2. マレーシアの日系企業

 日系企業の進出は早い。独立直後の1960年代から進出をし始めている。軍政下における反日感情もある中での進出だったが、1980年代に入ってからは、前述の「ルックイースト政策」が追い風となって、日本の企業進出も進んだ。
 やはり製造業の進出が多いが、ここにきてサービス業も増えてきているようである。これまでは、安い人件費・電力料金などで工場進出がメインだったが、所得水準が上がるにつれ、サービス業も需要が伸びてきている。
 ルックイースト政策後の進出は、政府の支援策や国全体の親日ムードもあり、急速に増えた。気候もそれほど厳しくないし、食べ物もあまり抵抗なく食べられる味である(スパイシーなものが苦手な人は辛いかもしれないが)。治安も良いので、現地駐在員のストレスはあまり高くない(言語も現地語ではなく、英語で十分であり、またビジネスマンの話す英語はかなり聞き取り安い)。
 ローカル人材の教育レベルの高いので、優秀な現地スタッフを採用することができることは、進出企業の強みとなる。
 しかし、良い点ばかりとも言えない。次回は、今回紹介したこと以外で課題となる点も含めてお話ししたい。