【第51号】変化のスピードを見誤るな

1.川岸から眺めていてはわからない

 時代の流れを川の流れに例えれば、そのスピードや流れの変化は外から見ているだけではわからない。川底の形などからの複雑な流れもあるし、ゆっくりと流れているように見えて、実はかなりのスピードで流れていたりする。
 また長いトレンドで見れば、川の形自体が変化している場合もある。今まで、自分は川岸にいたと思っていても、遠く離れてしまって流れがよく見えなくなっていることもあり得る。
 川に実際に入ってみる、船を浮かべてみる、など川との距離をいかにして近づけるかの検討が必要である。「景気が悪いから」「環境が悪いから」と言っている会社は、川岸から見ているから、そう発言してしまうのである。

2.気付いた時には手遅れにも

 川岸から眺めていると、知らぬ間に流れが変っている、スピードが速まっている、ということが起こる。今、この大事な時に現場の温度が冷めている会社が多々ある。全員が川から上がってしまっている。これでは、変化のスピードについていけない。
 逆に、今、川の中にいる社員は危機感を抱いている。消費者の流行を生み出す感覚が、1話完結の劇場型になっているため、商品賞味期間が極めて短くなっている。続編への期待があまりない。コンビニエンスストアを定期的に覗くようにしているが、商品の回転はますます速くなってきており、商品棚の多くが「季節限定品」になっている。強い定番商品が育たない状況となっている。
 こういう時に流れから遅れてしまうと打つ手があっという間になくなる。

3.スピード力のある社員

 社内でもスピード力のある社員はいるはずである。流行に敏感である、先を読む力がある、行動力がある、こういう社員をいかに活用するか。
 まずそれなりの権限やポストを与える。特命ポストでもよい。社内で動きやすくすること、情報収集・情報発信をしやすくすることである。
 また、そういう社員の組織力を作り、抵抗勢力に潰されないようにブロックを作ること、社内ネットワークなどにより、影響力を持たせることなども重要である。
 社内が沈滞している会社を見ると、この「スピード力」がある社員がうまく機能していなかったり、育っていなかったりする。強力なブレーキがかかってしまっている。これでは、環境の変化についていける企業体質とはならない。
 トップや経営幹部は、自分たちだけで物事を決めているのではなく、若手も巻き込んで、変化のスピードに追いついていかなくてはならない。