【第47号】経営幹部は社員代表か

1.経営幹部に求められるもの

 経営トップや経営幹部(役員、部門長)の方々と話していて感じることがたまにあるのが、双方の考え方が微妙にずれてしまっていることである。
 いつもいっしょに話をする時間が取れるとは限らないので、個別に話しをする。すると、同じテーマで話をしている“はず”なのに、どうも話が食い違う。
 経営幹部はトップが何を考えて、何をしようとしているのかをしっかりと理解していなくてはいけない。社員が幹部の説明を聞いて、会社が何をするのかわからない、不安に感じてしまうことの原因の大半がこの幹部の説明の不十分さである。

2.トップとのベクトル一致

 経営幹部、とくに役員になったらトップの分身であることを更に意識してもらわなくてはならない。部門代表意識で、社員の前での“ええかっこしい”ではダメである。これが始まると社内で「派閥」ができてしまう。
 経営幹部はトップとベクトルを必ず一致させていなくてはいけない。これがないと、役員会、幹部会などの会議でも「本音」の議論ができない。会社の意思決定機関が表面上を取り繕った会議になってしまっては、会社の将来が危うい。
 トップの厳しい判断を、自分の部下である社員にしっかりと説明できなくては、ベクトルが一致しているとはいえない。ましてやトップ批判をするのであれば、「組織破戒者」と同じである。
 一致していくためには、特に数値についての理解を深める。数値の解釈は一致を図りやすいからである。100%はあくまでも100%であり、100万円はあくまで100万円だからである。

3.いっしょのバスに乗れるか

 派閥が出来始めるもう一つのきっかけが、トップの専権事項への侵食である。経営幹部があたかも自分に決定権があるかのように、「お前を出世させてやる」「お前の給料を上げてやる」などと言い出すと、社員はトップのいうことより、その幹部のいうことを聞くようになる。こうなると組織としては末期である。
 厳しい環境を乗り切るためには、よく言われるように、会社というバスに誰を乗せるのかをしっかりと吟味する必要がある。
 優秀な社員であっても、バスに乗れるとは限らない。トップの方針に従うことができないなら、バスを降りるしかない。
 トップの考えに意見具申することは必要である。しかし、意思決定に従うのは当然のことである。自部門のことしか考えない役員は役員失格である。経営トップと同じ視点で会社全体をみる能力が求められる。