1.インセンティブの目的
「インセンティブ」とは社員のやる気を促す給与・手当ての形態のことである。ダイレクトに給与や手当てに結びつかなくても、それが間接的に評価などを通じて給与・手当てなどに跳ね返ればインセンティブと言える。
例えば、タナベ経営の給与は半期年俸制だが、「業績貢献点」制度を導入しており、様々な日常活動を点数化して評価する仕組みになっている。受注活動からコンサルティング、執筆、講演などを金額に応じて点数化する。
その中で、新規のお客様から受注を取ると貢献点が倍になる仕組みとなっている。これは新規のお客様を開拓する「やる気」を起こさせるインセンティブとなる。
2.インセンティブが働かなくなる理由
こういったインセンティブを導入している企業は多いが、マネジメントする側が効果的に使っているかというと、あまり褒められたものではない状況である。
ある企業では、受注金額に応じて手当てが支給される仕組みになっている。ひとりで決めた場合は、当然独り占めできるが、複数の関係者がいた場合が問題になる。一応、原則のルールがあるのだが、最終的には所属長が決める。これがネックになってしまっている。所属長がうまく配分できないために、部下の不満を招き、インセンティブが原因でモチベーションが下がってしまっている。
別の企業では、業務の処理量に応じてインセンティブが出ることになっているが、ベテラン社員は仕事を分け与える側、若手は仕事をもらう側に分かれてしまう。分け与えている側は仕事を分け与えて、仕事の進め方を指導するだけでなく、インセンティブまで分け与える結果となり、やりきれなさを募らせている。
3.効果的活用
こうなってしまう原因は、いずれの例を見てもわかる通り、マネジメントがうまくできていないことにある。
まず、マネージャーがその「目的」を理解していない。そして、こういうマネジメントになってしまうマネージャーは多くの場合「自分が優秀である」と思っている。現役時代、ある程度仕事をやってきたので、それが土台となっていることが多いが、部下はほとんどその姿を知らないし、今はやり方もお客様も変っている。
もうひとつは、部下が何で一喜一憂しているかを理解できていない場合が多い。だから配分金額の決定理由をうまく説明できない。部下の給与や手当てが増える・減る、の決定権を持っているマネージャーはもっと部下の気持ちに敏感になるべきである。