【第37号】従来戦略の限界

1.転換できない人材の存在

 これまでとは違う戦略を打ち立てなければならない、何か新しいことをやらなければならない、ということを感じてそれに取り組んでいる企業、あるいは取り組もうとしている企業は多いはずである。
 しかし、これまで成功を重ねてきた世代や人材は、なかなか今いるところから脱却できない。長い間、会社の舵取りをしてきた社長と同世代の幹部が、これまでのやり方を捨てて、新しいものに取り組むことが難しいのはここにある。頭ではわかっていても、気持ちが変れないのである。以前も指摘したが「なぜ、変る必要があるのか」という思いから抜け切れない。
 その方たちも優秀な人材である。しかし、次世代の戦略を練ることができない場合もあることを認識すべきである。

2.自分たちの原点はどこにあるのか

 タナベ経営で、新しい戦略を構築することをお手伝いする際に、「ジュニアボード方式」という“次世代の幹部”を中心にプロジェクトを組んで行うことをお勧めしている。これは、そういう“縛り”がない、柔らかい発想で臨んでもらいたいからである。
 その中で、もう一度自分たちの事業の原点がどこにあるのか、そして「強み」はどこにあるのかを認識していただいている。若い人たちが考える「原点」や「強み」はベテラン社員や幹部社員が考えるものと違うことがある。それは事業の軸が移動していたり、マーケットが変化しているからであり、当然のことなのである。若い人材の発想が必ずしも正しいとは限らない。彼らの発想を生かす形で、現在の幹部陣がそれを実際の経営に反映させていくのである。

3.付加価値を追求する

 その強みを生かすためには、付加価値を追求して差別化を図っていく必要がある。自分たちの本業、コア事業にどう付加価値をつけていくのか。どうすれば、市場にその価値を認めてもらえるのかを徹底的に考える。
 ライバルはどこで勝負しているのか、自分たちはどこで戦うべきなのか、市場の変化の先をしっかりと見据えて、戦略を練る必要がある。
「戦略のミスは戦術でカバーできない」をもう一度認識して、従来の戦略から脱却しなければ、戦う前に負けてしまう。

弊社は経営者、経営幹部の情報収集、意思決定の一助として「2011年度 経営戦略セミナー」(11月25日に仙台国際ホテル開催)を今年も開催する。今年のテーマは「臨界経済下の事業モデル革新戦略」である。来期の自社の経営戦略構築に、ぜひご活用頂きたい。