【第31号】新入社員を戦力化するために

1.「ゆとり世代」という先入観

 新入社員も配属から3ヶ月がたち、職場にも仕事にもなれてきていることではないだろうか。いろいろな会社を訪問していて感じることは、「最近の若者は」という枕言葉で語られる部分が、どうも様々な媒体で伝えられる印象に引っ張られているということである。
 「ゆとり世代」だから、本を読んでいない、コミュニケーション能力が劣る、礼儀知らずである、等々。確かにそういう社員もいないことはない。しかし、全てがそうではない。若い世代の小説家も台頭してきているし、音楽の世界、あるいは芸能の世界でも有能な若手が多数出てきている。ネットとの親和性や携帯小説というジャンルの伸張をみてもこれまでの世代と比べて能力が劣るとは言い切れない。

2.新人は仕事をしたがっている

 筆者が新入社員時代、同期入社の社員と飲みに行くと、そのたびにどれだけ仕事を任されているのか気になった。早く一人前の仕事を任させられたいと思うのは当り前である。
 しかし、最近は“見習い期間”が長くなっているように感じる。1年間は目標を与えない、とか担当を与えないという企業が増えてきている。本当にこれで良いのだろうか。
 筆者が特殊な事例だとは思わないが、私はたまたま、私の教育担当の先輩社員が、入社後半年以内には異動することが決まっていた。私はその“後釜”として配属されたのである。よって、仕事を覚える期間は決まってしまっていた。半年以内に自立しなければならなかったのである。
 今から考えれば、これが良かった。当然、半年では一人前にはなれない。でも、それに向けて本人は必死なったし、半年たった以降もできるだけ自分で解決しようと努力を続けられた。

3.フォローはしっかりと

 異動後も先輩は何かとフォローしてくれた。でも、一番、心配してフォローしてくれたのは、その先輩の異動先の上司であった。私の仕事内容を100%理解してくれているわけではなかった。しかし、どれだけ苦労してがんばっているかは認めてくれて、いろいろと相談に乗っていただいた。その人なくては、その後の自分はなかったと言える。
 何もフォローするのは、仕事の内容を知っている人間である必要はないのである。“理解してくれている”だけで良いのである。
 甘やかす必要はない。一人前に扱い、仕事を与え、そしてしっかりとフォローしてあげる。若いうちの苦労はあとで何倍にもなって自分の宝となって返ってくる。仕事も与えなければ、フォローもしない。これが新入社員が辞めていく最大の原因である。