【第29号】お客様視点の“本質”とは

1.未だに残る「社内の都合」

 ある生命保険会社の営業担当者と食事をする機会があり、いろいろな現場の話を聞くことができた。その際、改めて感じたのは、まだまだお客様視点になっていないな、ということである。社内ルールを守るため、自分たちの正当性を保証するために、必要書類をそろえることに必死になっているように感じる。
 法律で決められたことを満たすための手続きであるなら、その旨をしっかりと周知徹底すべきである。社内ルールの社内不徹底の始末をユーザーに押し付けられたらたまらない。

2.何のためのサービス・商品なのか

 保険金の受取人を変更するにも、いろいろと書類が必要になる。世間では保険殺人など保険がらみの物騒な事件がおきているせいなのかもしれないが、本人の意思確認は、本人にあまり負担をかけないで正確に行うという視点が、聞いた話からは伺えなかった。
 保険というのは緊急時や困った時のためにあるものである。自動車保険を複数かける人はいないと思うが、生命保険関係は複数の会社にかけているケースがある。終身保険、医療保障、年金保険、ガン保険など目的に応じて保険会社が違うケースもある。しかし、これらの窓口がひとつになることはない。せめて緊急連絡先の携帯カードやシールなどを配布することはできないのか、と思ったりもする。
 まだまだ保険の世界は、専門性が強いため、お客様のニーズを探求できていないからかもしれない。

3.このぐらいはわかって当たり前になっていないか

 ITツールなどもそうである。こういう端末を使っているユーザーはこのぐらいの用語は「わかって当たり前」になっていないか。確かに辞書のような厚みのある取り扱い説明書は読むのも困るが、問い合わせはすべてインターネットで、でも困る。
 以前もこのコラムに書いたが、今年に入りツイッターを始めた。その時はブログも書いていなかったが、ここ最近そのブログも始めた。いずれも専門用語(知っている人からすれば専門用語でも何でもないのかもしれないが)の理解からだった。漢字はその表記から意味を類推することができるが、カタカナ用語はそうはいかない。ひとつひとつ理解していかなくてはならない。デジタルデバイドは今後、さらに大きくなっていくのではないだろうか。
 消費者が少なくなっていく時代、あえて購入層を狭める必要はない。お客様視点に立って、「業界の常識は非常識」をもう一度、確認すべきである。