【第22号】社員を突き動かすもの

1.トップの熱い想い

 多くの企業で、来期方針を作成し「さあこれから」という時期であろう。これまでにない厳しい決意を表明し、新しい年度に臨んでいる企業も少ないはずである。その決意を実現するには、社員全員の協力が必要になる。どうすれば社員全員の協力を得られるのか。
 ひとつには、トップの熱い想いをどれだけ伝えられるか、である。トップの本気が伝わらなくてはその危機感は共有できない。
 表現の仕方、発表の仕方、全てにおいて「これまでと違うぞ。今度こそ本気だ」と思わせなくてはいけない。泥臭く自分の想いを表明できる経営者が減ってきたように感じる。スマートにやる必要はない。全員にわかってもらいたい、わかってもらう必要があるんだと、強く思うことである。

2.頭と心で理解させる

 多くの企業で、会社の危機や困難については、すでに語ってきているはずである。なぜ、理解されないのか。ほとんどの社員は“頭”ではわかっているのである。「社長の言っていることは正しい」と。しかし、“心”ではわかっていない。「だから、俺(私)に何をしろと言うのか」となる。そのズレを無くして行かないと社員は動けない。
 そのためには、トップをはじめ幹部社員が「身近な表現」で伝えていくしかない。中堅、若手と同じ目線で、同じ表現で、わかり易く伝えていく。トップ・経営幹部の「原体験」をストーリーとして話し、理解してもらう。“心”で理解する部分は、ある意味「洗脳」に近い。こうすればやれるんだ、と強く信じさせなくてはいけない。
 私自身も体験したことがあるが、ある企業の経営者に本気でいい会社になってもらいたいと熱く語っているときに、「こんな表現があるのか」と自分でもびっくりするような言葉が口をついてでてきて、それに経営者が共感して下さり、仕事に結びついたことがあった。

3.率先垂範できすリーダー

 トップの想いが方針に反映され、それを伝えることができたなら、あとは実行するだけである。そのためには、その計画を率先垂範するリーダーが必要となる。計画の具現化である。部下の上司を見る目は年々シビアになってきている。過去の栄光にしがみついて、現状の「戦場」で部下といっしょに戦えない、先頭を切って飛び出していく勇気を持っていない上司の言うことを部下はきいてくれなくなっている。
 上司が自分の上役への報告を部下任せにしたり、お客様へのクレーム対応まで部下任せにしている(つまり部下の足を引っ張っている状態)ようでは、リーダー失格である。
 率先垂範できるリーダーを増やしていくことも社員を巻き込んでいく実行レベル(戦略遂行)においては重要である。