【第9号】人材不足はツケの先送りの結果

1.企業の戦略実現も人から

 ここ最近、様々な企業をお手伝いする中で実感することが、人材育成の遅れである。諸事情があって、人材育成を行ってこなかった、行えなかった企業が苦しんでいる。
 新しい事業を始めるにしても、うまくマネジメントができない幹部社員の代わりを探すにしても、人材が不足しているため答えが見つからなくなっている。
 経営トップが素晴らしい戦略を作っても、実行する人がいない。これほど悔しいことはないはずである。しかし、その壁にぶち当たっているのは、今や珍しいことではない。業績が思うように伸びていない企業は、ここがネックとなってしまっていることが多いのである。過去のツケが今、数倍になって企業業績の足を引っ張ることになっている。

2.人は1年、2年で育たない

 人は1年や2年では育たないものである。人材のヘッドハンターや転職ビジネスに関わる人が「少なくとも1つの会社に5年は居て何かを成し遂げろ」というのはそういうことである。社内の研修や外部研修に参加させてもその期間が半分や3分の1に縮まったりはしない。ポジション(役職・役割)も全ての人を育ててくれることはない。そういった準備ができていた人(ひとつ上のポジションの仕事振りを観察し、常に自分に置き換えて考えられていた人のこと)だけに当てはまるのである。

3.採用も育成も継続がポイント

 人の採用にしても、育成にしても継続が重要である。景気の流れで採用してみたり、しなかったりした企業では、ある一定層の人材が不足しているという問題だけでなく、ノウハウの継承やジェネレーションギャップによるコミュニケーション不全につながっていたりしており、組織の機能低下を引き起こしている。
 人材育成も業績に左右されることにより、一貫性がなくなり、消化不良を起こしてしまうほど教育研修を受けた世代と、一切なくなってしまった世代に分かれている企業もある。社内に理屈っぽい世代と、ビジネスの原理原則や業務の基本知識が欠如している世代が生まれて対立している場合もある。
 収入が減ったからといって食べることを止める訳にはいかない。社員への投資も同様である。企業が生きていくために必要なことであれば、継続的に実施していくべきである。教育は社員のためではなく、会社の成長のために実施していくのである。