【第3号】気になるあきらめの早さ

1.自分で作る「自分の壁」

 ここ数年感じることはベテラン、若手を問わずに諦めが早くなったことである。「やってもむだ」「過去に何回もやったが効果がなかった」「うまくいくはずがない」という意見が会議や打ち合わせで多く聞かれる。そういう時に私から必ずこう質問する。「誰がそう言ったの?」ほとんどの場合、他人(第3者)から言われたわけではない。自分自身がそう思っているだけなのである。自分自身で「できない」「やれない」と決め付けてしまっていれば、実際に取り組んだところで成果がでるわけがない。
 こういう社員が多いのは、業績が悪い会社に限らない。強烈なリーダーシップのもと、言われたことだけを素直に実践してきた社員が多い企業も同じ状況になっている。考える力が弱ってしまっているために、自分で工夫して「どうしたら可能になるか」を考えないのである。

2.虎穴にいらずんば虎子を得ず

 この故事の通り、リスクを冒す(だめかもしれないがやってみる)ことをせずして成果は得られない。なぜ、やってみることすらためらうのだろう。ここには次の段階の心理的抵抗がある。「めんどうくさい」「手間が増えるのはやだ」というものである。
 ここを突破するのは大変である。納得できる理由がないと彼らは動いてくれない。トップダウンで「やれ」と言ったところで、目の届かないところでサボタージュされてしまう。本当に人間とは弱いものである。
 ここからは粘り強く説得していくしかない。なぜ必要なのか、今やらないとどうなってしまうのか、何回も繰り返して説明して納得してもらう必要がある。

3.成長の実感

 重要なのは、やった結果、自分自身の成長を感じてもらうことである。失敗しても、成果がでなくても何かに取り組んで得られないものはない。失敗から学ぶことは幾らでもある。しかし、何もしなければ、成功もなければ失敗もない。学ばないところに成長はない。諦める前にやるべきことは山のようにある。その山を前にして奮い立ってもらいたい。それが今の閉塞感の打破につながり、次のステップが見えてくる。
 私自身も自分の言い聞かせていることだが、「やらずに後悔するよりやって後悔しろ」ということである。くよくよしていても埒は明かない。取り組む勇気を持つことも重要である。