【第271号】何のために働くのか

1.結局は売上・利益

 つい最近、お客様からこんな相談を受けた。「今、1店舗で事業をやっていて、それなりにうまくいっているので、何で多店舗展開しないの?と聞かれる。必要なんでしょうか?」ということだった。その経営者は、店舗展開している会社に勤めたことがないため、イメージがわかないらしい。聞かれる、というより勧められると言った方が正しいのかもしれない。その社長が創業したのは、業界の体質を変え、適正価格でサービスが提供できるようにしたいという想いからだった。しかし、その経営者の周りにいる人たちは、「もっと儲けられるよ」という感じで勧めているようだった。つまり、そんな経営者が多いということだ。志が大事だ、という勉強会にはきっとその方達も出席している。しかし、実践できていない。

2.自分の軸を見失っていないか

 相談を受けた経営者の会社の「売り」は高い技術力でもあった。しかし、もっと大事なものがあったはずだ。それが、前述の適正価格ともっと多くの人にサービスを提供したいという想いであり、それを忘れていたのだ。筆者は、最後はこうアドバイスした。「店舗展開は手段です。目的ではありません。社長としての想いをもっと多くの人に届けたい、理解してもらいたい、という熱い想いがあれば、店舗展開もありではないですか?」どうやら、このようにアドバイスしてくれた人は皆無だったらしい。翌日、偶然に出会った時、このフレーズが頭から離れないと言っていた。見失っていた自分本来の軸に気づいたのだ。今後のこの会社の成長が楽しみになっている。

3.人を育て組織を作るということ

 店舗展開の相談時に、いっしょに相談されたのが、「自分は人を教育できていない」ということだった。店舗展開していく時に、売上・利益を目的に店舗展開すると、店長は「売上至上主義」になる。すると、売上をあげていればいいんでしょ、と社長の言う事を聞かなくなる。組織として崩壊してしまう。まずは、ビジョンの共有が大事だ。ビジョンを共有できると、戦略が共有できる。店長は、社員代表でなく、社長の分身となるのだ。ここが管理職を育てる基本となる。ビジョンを軸に繋がった組織は、判断がぶれない。店長も社員も社長と同じ判断を下すようになる。目指すところが同じだからである。ここまでできれば、人を育成できる人を増やすこともできる。会社は業績を伸ばし、利益を出さなければならない。しかし、そこだけにフォーカスしていたら、組織は崩壊してしまうのだ。