【第200号】営業失敗の思い出

1.納得いかなかった1年目

 最近、ある企業で営業マンを対象にした勉強会があり、営業の基本から応用までの話をした際、自分の体験談を話した。その内容で、質問が集中したのが、失敗にまつわる話しだったので、ここでそれを整理したいと思う。
 営業に配属になったのは、以前いた会社の入社6年目。管理部門での大仕事が一段落したタイミングだった。配属先は、建設機械・輸送機械のファイナンス部門。営業のベテラン揃いの部門だった。配属1年目は、その先輩方とことごとく衝突した。管理部門とは別会社と思うぐらいの社内ルールの違い。お客様と真剣に向き合わない妥協が許せなかった。飲み屋で意見を言うたびに、「生意気だ」と頭を叩かれた。それでも反論をやめない営業初心者だった。

2.担当者交代?

 その部門の重点ユーザーを任されたのはいいのだが、神経質で線が細そうに見えたせいか、メーカーの担当者から「担当を代えてくれ」という電話が入った。ユーザーの社長も評価してくれていなかったらしい。
 その時の前任者の対応のお陰で、今の自分があると思っているのだが、その前任者は、その要望をきっぱりと断ってくれた。「彼はまだ営業に慣れていないだけで、優秀な社員。代えるつもりはない」と言ってくれたのだ。その思いに応えるべく、言われたことは愚直に守った。毎週月曜日にはそのメーカーの営業所に顔を出すようにして、顔を覚えてもらう。見積もり依頼には、24時間以内には対応する。
 最終的には、そのユーザーの社長からは絶大なる信頼を得ることできた。競合メーカーのファイナンスの依頼まで来るようになった。

3.出入り禁止

 出入り禁止を食らったこともあった。1億円を超えるファイナンスの案件を、社内のOKをもらえず、商談が壊れたときに、担当のメーカーの所長から「お前の顔は見たくない」と言われてしまった。
 この営業所が属する支店には、仕事のつながりがある担当者いたので、頻繁に顔を出していたので、この所長とはよく会っていた。その度にバツの悪い思いをした。
 1年ほど経って、この所長の下に懇意にしていたある担当者が転勤になった。いっしょに仕事をするようになったある日、この所長から電話があった。一度、会いに来い、と。その時に言われた言葉はこうだった。「お前が一生懸命やっていることはわかっていた。うちの若い営業マンに営業のイロハを教えてやってくれ」
 営業にテクニックはない。目の前のお客様の課題解決だけである。それが信頼をつくり、それが数字に結びつく。