【第197号】起業家精神の取り込み

1.組織での扱われ方への不満

 先日、筆者が参加した勉強会は、35歳の経営者の話を聴くものだったのだが、参加者全員が20代(驚き)だった。彼らの世代は、失われた10(20)年に多感な時期を過ごした世代である。彼らの話を聴く姿勢は真剣そのもの。話が始まる前に、しっかりとメモを取り出し、聴き入っていた。
 質疑応答もあったので、講師の方にも質問をしたが、参加者の20代の方々にも質問をしてみた。それは、「どういう時に、認められたと感じたか(モチベーションが上がったか)」であった。
 その質問の答えの冒頭に、ほとんどの方が言っていたのが、「めったに褒められることがないので」「無条件に褒められることがない」「いつもボロクソに怒られているので」ということだった。

2.若者のチャレンジ志向

 違う勉強会で出会った20代半ばの若者も独立希望で、「35歳には」ということだった。先日の勉強会も、金融機関、公務員だけでなく、すでに独立している人、就活中の方もいた。共通しているのは、30代・40代には感じられない上昇志向である。転職することも厭わないやりたいことへのチャレンジ志向なのである。
 これまでは、向こう見ずな世間知らずの若者の危ない冒険心かと思っていた。確かに独立の動機や将来の夢には、世間を知らないことによる甘さもある。しかし、それを乗り越えられるだけの熱さと行動力が彼らにはある。
 組織に対する不満と、外への憧れ。将来への夢を感じられるのはどちらかは明白である。なにより、実際に成功している人が身近にいて話を聴ける。

3.新しいことへのチャレンジへ

 彼らの思いや行動力を企業は生かすことができないのだろうか。取り込むことができないのだろうか。
 独立して成功している人よりも、組織に留まり大きなプロジェクトや組織を動かすことをいきいきと実行している社員が魅力的に見えていないと勝負にならない。そういう社員もしくは管理職が社内にいるだろうか。
 そのヒントは若者が募らせる社内での扱いにもあるのではないだろうか。自分たちからみたら優秀に見える先輩や上司も幹部からはいつも怒られている。認められているように、必要とされているように見えない。そんな中で、自分の将来の夢を託せるだろうか。
 社内での新しい事業、新分野への取り組みなど、社内ベンチャー的なものに取り組む時に、若者の力を排除していないだろうか。ベテランだけでなく、彼らのチャレンジ精神も活かすことも重要である。