【第196号】自分の成長と危機意識

1.現状肯定と安住

 何も言われなくても成長していく社員と、何度同じことを指摘されても成長しない社員とどこが違うのか。
 成長しない社員の特徴は、「なんとかなるさ」の姿勢である。厳しいプレッシャーの中でのリラックスのためなら許せるが、ゆるゆるの状態で「なんとかなるさ」なのである。自分の与えられた責任に対してではなく、自分を取り巻く環境に対して楽観的なのである。組織の業績であったり、目標達成であったり、本来は自分もその責任の一旦を担っているはずなのに、その意識がない。当事者意識が希薄で、第三者の評論家になってしまう。だから、自分ができていないのに、他人の失敗を笑えてしまう。

2.成長の目的

 もうひとつは、成長の目的を明確に持っていないことである。なぜ自分が一生懸命頑張らなくてはならないのか、努力しなければならないのか、理解できていない。
 安定した物価のおかげで、給料が上がらなくてもそこそこ暮らせてしまう。今は、能力が低い、という理由だけではクビにもならない。多少うるさいことを言われても、我慢していれば会社にいられる。余程のブラック企業と言われる企業のような、パワハラ紛いのことがなければ、成長しなくても問題ないのである。
 見栄を張る必要もなくなり、みんなでそこそこの生活。あれが欲しい、これが欲しいというハングリーさを失った社員は、働く動機すら持てなくなりつつある。
 知的好奇心を伴った成長意欲や、自分の能力を高めることで、社会貢献度を上げていこうとか、そういう意識の高い人は、そうそうに独立してしまい、大きな組織の中に飛び込んでこなくなっている。

3.ライバルはどこに

 一方で、目に付くのが外国人の意識、意欲の高さである。日本の競争意識の薄れた社会で育ってきた社員より、激しい競争を生き抜いてきた外国人。また、その志も高い。ある社員は、出身国と日本の架け橋になりたい、とまで話していた。
 そういう思いで仕事をしている社員と、何の夢もなく、実現したいものもない無気力社員が競争できるだろうか。
 数年後、外国籍の正社員の指示で、日本人のパート・アルバイト社員が作業をしているなんて風景も当たり前になる。自分たちの周りの狭い範囲で物事を判断していると、とんでもないことになる。企業はグローバルで戦っている。そのために、社員の国籍に拘っていることはできない。会社のために働いてくれるなら、日本人以外でも採用する。採用せざるを得なくなるのである。ハングリーである、忠誠心もある、日本語も母国語も英語も話せる、なんて社員を雇わない企業があるだろうか。