【第194号】楽しく仕事をする環境

1.管理職の悩み

 ある会社で、「社員が楽しく働ける職場づくり」というテーマで話し合いをしてもらった。社員からすれば、すぐにでも実現してもらいテーマではあるが、なかなか難しいというのも事実である。
 事前に社員の何人かにヒアリングをしておいてもらった。まず、上司としての悩みが幾つか見えてきた。それは、部下が何に悩んでいて、何に躓いていて、何が理解できていないのか、を把握できていないことである。「どうしてできないのだろう」「どうしてわからないのだろう」という点が掴めていない。だから部下に寄り添えなくなっている。「いっしょに解決しよう」「みんなで話し合おう」にならないため、部下を孤立される原因となってしまう。
 管理職自身、業績という“結果責任”を負っているので、そのプレッシャーから、どうしても目の前の成果を求め過ぎてしまう傾向があるのも部下を追い詰めてしまう一因になっている。

2.部下の悩み

 部下は部下で、自分のわからないことを放置してしまっているところがある。何がわからないのか、自分がわかっていない。だから何を聞けば解決するのかがわからない。誰に聞けばいいのかがわからない。
 固有技術である専門性の分野から、社会技術であるコミュニケーション能力の分野まで悩みは尽きない。
 わからないことをいっぱい抱えている状況にも関わらず、部下は聞き方もわからない。忙しくしている上司にどうやって聞けばいいのか、何を聞けばいいのか、悶々としているのである。本来は、その姿に上司が気づけばいいのであるが、部下との距離のとり方に苦労している上司は、気づいてあげられない。

3.何が足りない職場なのか

 こういう職場には、「育てる」という視点がかけてしまっている。社員の成長スピードに合わせて育成する仕組み、育ってきた社員を評価する仕組み、評価した結果に応じて褒める、認める、報酬を出す仕組み、がない。
 評価はあくまで点数をつけ、給与を減額する方向にしか働いていない。モチベーションが上がらない負のスパイラルを生み出してしまう。
 また、明るさ、笑顔が職場にない。仕事に集中しているといえば、聞こえはいいが、会話が盛り上がらない理由は、人間関係が希薄になっている証拠でもある。他人に関心を払わない、興味を持たないのではコミュニケーションは図れない。厳しさは当然必要だが、そこに優しさが伴っていなければならない。