【第193号】業務チェックと効率

1.2重チェックは機能しているか

 日常業務におけるミスの防止のために2重チェック(ダブルチェック)を行うことは多いと思う。しかし、それが機能しないことがある。何故か?
 ひとつには、そのチェック自体がすべてを網羅していない場合である。10ページの資料の1ページを飛ばしてしまうようなケースである。
 もうひとつには、どうチェックしてよいのかわからない場合である。つまり“正しい姿”が理解されていないケースである。英語の綴りがわからない人にスペルのチェックをしてもらうようなものと一緒となる。
 いづれの場合も、チェックしている担当者が、その目的を正確に理解し、実行することが重要となる。ケアレスミスと呼ばれるものは、担当者の気の緩みだけでなく、その重要性を理解していないことからも発生する。

2.非効率化はどこから始まる?

 しかし、ミスの発生を恐れるあまり、何重にもチェック体制を作ればいいというものでもない。ミスが起こる場所は決まっているのである。
 ルーティンの業務であれば、変更が発生する点は決まってくる。日時だったり、担当者名だったりする。そこをしっかりと押さえ、エラーの発生を防ぐ。
 新しい業務であっても、どこでミスが発生しそうなのかを、過去の経験から予測し、チェックポイントを確定する。
 ミスの発生点が予測できれば、チェックリスト化も可能になる。チェックリスト化すれば、ダブルチェックも効率化され、少なくともその時点でミスは減る。
 つまり、業務に不慣れな担当者同士でチェックをし合っても、結局はミスが発生するということになる。

3.ヒューマンエラーは防げない

 所詮、人間がやることには、限界がある。本人任せではミスが起こるということである。それをどのような仕組みで防ぐのか、そして人への教育で防ぐのか、ということが重要となってくる。
 ミスを犯した社員を責めるだけでは問題は解決しない。どうした再発防止ができるのか。ミスが頻繁に発生する現場、会社には、「ミスは発生しないもの」「間違いは起きないもの」という“前提”があって仕組みが構築されている。そもそもエラー防止の機能が存在しないのである。福島第一原発の汚染水問題も、事故が起きてその原因を調べると「何故?」というものが多発する。これも同様である。
 気の緩みも原因がある。体調が悪ければ、普段しないようなミスも起こる。機械も整備状況が悪ければ、誤作動を起こす。万全のケアが大切である。