【第190号】コミュケーションは難しくなったのか

1. 人間関係が希薄に

 コミュニケーションが取れない、という相談は増えることがあっても減ることがない。中堅リーダーを対象にしたセミナーを開催した際も参加者の多くが、この問題を抱えていた。
 どうも話を聞いていると、人間関係の構築が難しくなってきているのが一因のようである。コスト削減から少数精鋭になり、人員の余裕がない中、なかなかゆっくりと部下と話をする時間がとれないマネージャーが増えている。プライベートで飲みに行ったり、食事をする時間も限られている。定期採用が減り、中途採用が増えることで、さらにその人なりを知っているケースが限られてくる。会議という顔を合わす、会話をする機会は増えるが、人間関係が希薄になるという矛盾が発生してしまっているのだ。
 時間的な問題の解決は難しい。人を増やすことだけでは解決しないし、仕事の時間を削るわけにもいかない。

2. パワハラ・セクハラ恐怖症

 もうひとつの要因に、パワハラ・セクハラへの恐怖心である。何かを言うと部下からパワハラだ、セクハラだ、と言われるリスクが高まっている。これに管理職が敏感になってしまって、部下とのコミュニケーションを怖がっているケースも増えている。
 定義はあるものの、基本的には、部下がどう捉えたかが重要になってくる。部下・指導育成だと言っても、パワハラだ、セクハラだ、と主張されると抗弁のしようがない。
 これは、どういうケースが当てはまるのか、社内で共有化しておく必要がある。部下の過剰反応も否定できないからだ。管理職の意識を高める教育指導はもちろんだが、社員全員に対して、こういう場合は当てはまる、こういう場合は当てはまらない、というルールを作って徹底しておくことが重要である。
 そういう意味では、管理職の抱える悩みは大きくなってきており、コミュニケーション喪失が大きな課題となってきている。

3. 信頼関係構築

 その大元にあるのは、上司と部下の信頼関係の構築ができていないことにある。部下のバックグランドを知る機会が極端に減っており、なかなか部下のキャラクターを知ることができないため、対応ができていない。
 どうやって、オフィシャル以外の交流の機会を増やし、プライベートな部分で分かり合うかがポイントとなってくる。
 ある意味「本音の会話」ということかもしれない。それがどれだけ確保できるかが理解の深さを決めることになる。
 怖がっていても仕方ないこと。相手の懐に入っていく勇気が必要となる。相手をトータルで知る、部分的な理解で決めつけないことが重要となる。