【第186号】管理職交代時のモチベーション

1. 権力の委譲

 トップ交代による権限委譲だけでなく、幹部社員交代による権限委譲も組織を組み替えていく中では、頻繁に発生する。役職定年制を導入している会社であればなお更である。
 この時、委譲する側の問題としてモチベーションの低下がある。これまでマネージャーとして活躍してきたそのポジションから離れる寂しさと、今後プレーヤーとして活躍できるのか、という不安からである。これは業種や業態を問わず発生する。
 また、委譲される側や周囲の問題として、委譲した社員への接し方がわからないというものである。これまでもそういう社員が何人もいた、という会社なら問題ないが、あまり発生してこなかった小さな組織の場合、“腫れ物”にさわるような対応になると、やっかいである。ある程度割り切って、対応していくことが必要だが、これには、しっかりとした役割と仕事を与えてあげることが重要となる。

2. 情報の流れ

 権力が委譲すると「情報の流れ」が大きく変わる。これまでの前リーダーに集中していた情報が、新リーダーに集中するようになる。「自分が中心にいないんだ」と実感する瞬間である。報告・連絡・相談先の変化、指示命令系統の変化が起こる。当然、権力があるところに情報は集中する。
 この瞬間を「楽になった」と捉えるか、「さびしくなった」と捉えるかは人それぞれである。この流れの変化は避けられない。無理に関わろうとすると、人間関係がギクシャクする原因となる。関われば、どうしても口出ししたくなるし、口出しすれば、前リーダーの意見は無視できない。社長であろうと、部長であろうと、課長であろうと、同じである。まずは流れの変化に任せることである。

3. 役割をどう振り分けるか

 前リーダーの役割をどうしていくかも大きな課題となる。単なる交代だけではない。中間管理職であれば、再チャレンジの場をどうするのか、社長や取締役クラスであれば再当番は余程のことがない限り考えなくていいので、次の役割をどうするか、になる。
 再チャレンジのケースでは、まず本人の意思が重要となる。「楽になった」と感じていた場合は、逆効果になるからだ。本人がもう一度やりたいと思うならば、何が課題なのかを明確にする。
 次の役割を与える場合は、新しい組織への影響も考えなくてはならない。“船頭”が増えるようなことがあってはならないし、組織から完全に独立するような立場も違和感が出てしまう。過去の経験を生かしつつ、うまくこれまでのノウハウや顧客基盤を組織の若手に渡していくことが重要となる。トップ、取締役クラスは、対外業務や顧問・相談役など経営にタッチしないポジションが該当する。