【第184号】後悔しないために

1. 後悔先立たず

 筆者が毎日、通勤で通る道の小さな交差点に、花が手向けられるようになって1ヶ月が経った。20代の学生が40代の女性が運転する自動車にひかれ、事故当初の報道では意識不明の重体とのことだった。
 いつしか現場に小さな空き缶に一輪の花が置かれたと思ったら、大きな花束になり、缶の数も3つになり、花の数も増えた。花を供えている方が被害者の関係者か、加害者の関係者かはわからないが、それぞれがつらい気持ちを抱えていることは想像に難くない。
 ここを通るたびにこの「後悔」という言葉を考えさせられる。ほんのちょっとした油断が、人生を狂わす大きな事件となり、後悔を生む。

2.経験を生かす

ビジネスの世界でも同じである。「あー、あの時やっていれば」「ちゃんとした確認をしておけば」。交通事故のように法律に違反し、その罪を償うということはないかもしれない。しかし、その失敗で会社に迷惑をかける、同僚に迷惑をかける、そしてお客様に迷惑をかけるなど、関係者を巻き込むことには変わりない。
それを防ぐためには、どうすればいいのか。それは「経験を生かす」しかない。人間は都合よく忘れるようにできている。辛かったこと、思い出したくないことは、ストレスから逃れるために忘れてしまうのである。
しかし、それでは、また同じ失敗を繰り返す。“事件”は忘れても、同じことを繰り返さないための仕組みやルールを構築し、その仕組みやルールの中で仕事を進めていければ、失敗は起きない。忘れ易い人は、メモを上手に活用する、うっかりミスが多い人は、ダブルチェックやチェックリストを活用する、などである。

3. 成長スピードの差

 失敗から学ぶ、その経験を生かせる、かどうかで、成長のスピードが決まる。成長のスピードが遅い人は、その失敗を繰り返さないための工夫が足りない。ミスや失敗のカバーをすることで精一杯で、2度と繰り返さない、というレベルまで達していないのである。ミスをするとバタバタと忙しく対応するが、同じようなミスを重ねてしまうのは、こういうことが原因なのである。これでは上司・先輩の期待に応えることはできない。
 なぜ発生したのか、どうしたら発生を防げるのかをその都度、真剣に考えることが重要である。「気をつければいい」なんていうのは解決にならない。「意識を持てばいい」の意識は変わらない。人間はそんなに便利にできていないからである。
 いつまで経っても成長できない、しないと思われる人は、経験を生かしきれていない可能性が高い。