【第182号】どちらを向いてマネジメントをするか

1. 上ばかりを向いている

 中間管理職は、上に上司を持ち、下に部下を持つ難しい立場である。しかし、その立ち位置によっては、その難しさも誰からも理解されずに孤立することになってしまう。
 まずは、上(上司)ばかりを見て仕事をしている人である。「上司にはどう移っているだろう」「上司への報告(ばかりでなく言い訳も含めて)はどうすればいいだろう」ということばかりが気になっている。こうなると部下への態度が、上から目線になってくる。
 そんな上司を部下はさめた目で見ている。「どうせ自分たちの言い分は採用されず、悪者になるのは自分たちなんだろう」と感じているのだ。当然、部下からの信用は得られない。チームワークは最悪の状態になっていく。報告を受けている上司も、聞いていることと実際に現場で起こっていることの矛盾に気づく。この中間管理職はいたたまれなくなってしまう。

2. 下ばかりを向いている

 もうひとつあるのは、部下ばかりをみている上司である。部下からすれば“親分肌”のように頼もしく思えて、何でも相談できる。俺にまかせろ、状態である。しかし、その中間管理職の上の上司に対しては、反抗的になる。「俺たちのことをわかっているのか」「ちゃんと現場の言い分を聞き入れてくれるのか」となる。これでも困る。
 中間管理職が部下の代表となってしまっているケースだが、求められているのは、こういうことではない。直接の部下から慕われて、気持ちがいいかもしれない。ところが、このケースも長続きはしないのである。上司は、中間管理職の言い分を素直には聞けなくなっていく。組織のこと、上司の考えを反映させた助言をしてくれないからである。そして、その中間管理職の意見が反映されないことに、部下は苛立つようになる。最初のケースと同様の結果になってしまう。

3. バランスのいいマネジメントとは

 中間管理職に与えられた使命は、上司のことも部下のことも理解し、お客様、そして組織全体のことを考えながら、どうすべきなのか、の方向性を打ち出していくことである。
 兎に角、報・連・相を蜜にし、コミュニケーションのネットワークを構築することが重要となる。と同時に、どちらともしっかりとした信頼関係を構築することがポイントとなる。
 また「言葉」をそのまま双方に伝えるだけではいけない。しっかりと意図が伝わるように、自分の言葉で伝えなければならない。「社長がこう言っていたから」「部下の言い分はこうです」では、役割を果たしていることにならない。
 大変な役割であるが、企業にとって大事な役割でもある。