【第172号】賃金制度の悩み

1. 中小企業の増加する課題

 ここにきて賃金制度改定についての問い合わせや相談が増えてきている。アベノミクスで給料を上げて欲しいとの要望が政府から出たが、実態はほとんど上がっていないのが実情。その中で問題点が増えてきているのだ。問い合わせ企業の規模は1,000人規模から30人規模までさまざまである。しかし、抱える問題はほぼ共通している。第一は社員の不平不満が出てきていることである。なかなか給与が上がらない中、メリハリが付けられていないため、優秀な社員ほど不満をためやすい。地方の中小企業は中々優秀な社員を採用することができないため、辞められるのは非常にダメージが大きい。第二に給与が下がる仕組みがないため、給与の固定費化が経営の負担となってきていることがある。

2. 自前主義の限界

 多くの企業では、制度は労務担当者が市販の書籍で勉強して、あるいは社長が勉強して制度構築されている。しかし、市販の書籍には一般的な共通項目しか紹介されていないことに加え、最近は労務を取り巻く法律の変更も多く、また労働環境の変化も激しい。働いている社員の価値観や働き方も変わりつつあり、制度の陳腐化が起こりやすくなっている。
 また自社で行っていると、社員自身あるいは社員の家族の顔が見えるため、ドライな制度にならないことが多い。部門や階層ごとのしがらみもあり、不透明な部分を残した制度となりやすい。
 また調整することが多い人事制度の構築は忍耐と時間が必要で、まとめ役が人事異動でいなくなる、あるいは退職される、熱意が薄れるなどのきっかけでいつの間にか立ち消えになるケースもある。

3. 押さえるべきポイント

 まず、人事制度は制度全体をトータルで捉えなければならない。賃金制度・評価制度・処遇制度・教育制度がバラバラになっていては、制度としての相乗効果は出てこないし、制度単体としても機能しなくなる。
 最初にコンセプトをしっかりと作る。すべての制度の共通の土台となるものである。そこがはっきりとしていないと、各制度をつなぐことができない。
 そして、組織の活性化・社員のモチベーションアップ・人材育成にどのようにつなげていくのかを検討する。制度自体は、賃金を決める、評価を決める、などの機能を持つが、それは人材育成に結びつける手段でもある。どのように成長したら賃金があがるのか、評価があがるのか、処遇があがるのか、それをしっかりと伝えることに意味がある。
 最後に運用レベルを維持することに配慮する。考課者訓練の実施やマニュアルの整備などである。外部ブレーンをうまく活用しながらスピード対応での制度構築が重要となる。