謙虚さを忘れない

1. 上から目線になっていないか

 ビジネスの世界では、常に対等の関係とは限らない。どうしても仕事を出す側、もらう側などの立場の違いが生まれてしまう。しかし、基本的には、「やってもらう」つまり第三者に仕事を依頼するのは、自分たちでできないからであり、仕事を与えていることではない。仕事を引き受けているということは、相手ができない、嫌がる仕事を代わりにしているのであり、仕事をもらっているということではない。しかし、人間の心理として、「お金を払っているのだから、これくらいは許されるだろう」というわがままが発生する。「お金をいただいているのだから、これぐらいは我慢しなければならない」という忍耐も必要になってしまう。
 これは、あるべき姿ではない。本来は、仕事のやりとりは対等であり、win-winの関係でなければならない。

2. 器の大きさ

 人をリードしていくためには、ある程度の「器」の大きさが必要になる。このとき「上から目線」で人を見下している人の器では、リードできない。
 まず、物事をロジカル(論理的)に観察できなし、説明できない。見下している、という気持ちがあると、丁寧に説明する前に、言葉でねじ伏せてしまう。畳み掛けるように言葉を発し、相手に反論の機会を与えない。反論されたらすぐにその数倍、言葉を浴びせかける。
 また、人の弱みを理解できず、人の心の痛みがわからない。どこで傷ついているのかについて、まったく鈍感なのである。
 現在、力による暴力が問題になっているが、言葉の暴力も無視できない。ボディーブローのように効いてきて、相手をダウンさせてしまう。

3. 人は誰についてくるのか

 人は自分の気持ちを理解してくれ、「そうだよね」と言ってくれる人についてくる。常に「I(私)」が主語の人なのである。自分がうれしい、自分が感激した、自分が悲しい、といった具合である。「We(我々)」では、伝わらないのである。ましてや誰だかわからない「They(彼ら)」では、褒める意味すらなくなってしまう。しかし、意外と主語を曖昧にしていることは多い。「良かったね」という褒め言葉は、誰が主語だかわからない。言った本人がそう思っているのか、みんななのか、一般論なのか…。
 リーダーは謙虚さを失ってはいけない。地位や権力で人を動かそうとしても限界がある。この厳しい時代、それではライバルには勝てなし、組織力の発揮も難しくなる。