1. 自分を振り返ることの難しさ
自分が言っていることとやっていることを完全に一致させることは本当に難しい。以前にもこのコラムで指摘したが、人間は完璧ではないからだ。しかし、リーダーは部下にそれを求めなければならないことも出てくる。そこで重要なのは、自己分析である。自分が苦手なことがわかって部下に依頼しているのか、そうでないのか、である。上司は謙虚であれ、とも言われるが、部下からすれば、上司自身ができていないことを求められるのは理不尽に感じるかもしれない。しかし、「おれもできていない面あるが、お前ならうまくやれると思う。ぜひ、推進していって欲しい」と頼まれれば、部下も悪い気はしない。
自分ができていること、できていないことをしっかりと冷静に振り返る必要があるのは、そのような理由からである。
2. 相手を許せるか
自分を含め、すべての人間は、完全でない人間に囲まれて生活しているわけで、その度に憤慨していては身が持たない。つまり自分と関係ある人間を「許せる」ことが重要になる。起こったことは仕方ない。いくら怒ったところで、改善はしない。前に進む、対処して改善を図るしかないのである。
ここでも自分がどれだけ周囲から「大目に」見てもらっているかは気づかない。自分の粗相に対して、すべて指摘されているとは限らないからである。気づかない失敗の方が多いのである。自分ひとりで「しまった」と思っていることは多いはずである。しかし、人の失敗やヘマはとても目に付く。そしてそれを許せない人が多いのである。
3. 相手への期待とは
その原因について、わかりやすく解説してくれている本を見つけた。心理カウンセラーの渡辺奈都子さんが書かれている「人間関係をしなやかにするたったひとつのルール」という本である。この本によると、人間は、相手に期待しないではいられない。そして、その期待を裏切られると腹を立てることになる。相手を変えることはできないのに、コントロールしようとしてしまう。行動は自分でしか変えられないのである。つまり、部下なり後輩が自分で行動を変えようとしない限り、変化はないということである。
強制的に力で変えようとしても、反発を生むだけである。今注目されている「選択理論」という考え方である。詳細は本を読んでいただくとして、以前、このコラムでも紹介したが「人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」。組織内でうまくカバーし合いながら、いい人間関係を築いていくことが重要なのである。