【第92号】うわさの怖さ

1. 先入観との戦い

 「人の口に戸は立てられない」という。口止めなど、ある意味気休めにしかならないということである。普段、仕事をする時には「仮説」を立てよ、とどんなに言ってもできない人でも、人と会うときは先入観を持っていたりする。「この人はこんなことをする人だろう」「この人はこんな性格の人だろう」と想像する。
 プラス方向で想像してもらえばいいのだが、マイナス方向だったりすると大変である。少し外見がたくましかったりすると暴力的なのではないかと思われたり、少しくたびれた格好をしていたらだらしのない人だと思われたり。人は常にその先入観との戦いである。この20年マスコミから「豪腕」と言われている政治家がいるが、彼を良く知る人が書いた最近の書籍を見ると豪腕のイメージは沸いてこない。もしかしたら、我々が刷り込まれてしまっている「先入観」なのかもしれない。

2. 信頼が崩れると

 信頼が崩れると、途端に先入観がマイナスになる。プラスに働いているときは、多少ヘマをしても「あの人のことだから、何かの間違いだろう」「きっと体調が悪かったに違いない」「足を引っ張った人がいたんだ」と好意的に解釈してくれるが、マイナスになると「だからあの人では不安だったんだ」「やっぱりヘマをしたか」「そんな気がしていたんだ」という解釈に変わる。
 挽回は難しい。そういう前提条件があった方が、次に入ってくる情報が処理し易いからである。何をやるにもそれが前提となる。
 筆者もそれを体験したことがある。一時、ブランドのスーツやカバンなどに凝り、そういうものばかりを身に付けていた時期があった。しかし、それを過ぎて、安くて丈夫でデザイン性が多少あるものに切り替えていても、回りから「高そうなものを身に付けていますね」と言われた。いつもブランドものを身に付けていると刷り込まれていたのである。

3. 今こそ真実を見極める力を

 このコラムで何度も指摘をしているが、人はどうしてもバイアスを通して物を見てしまうことが多い。それは直接自分で調査したり、見聞きすることができないからである。
 同じことを言っても、行動しても、持たれている先入観・イメージで解釈が大きく変わってしまう。最近の政治家の発言や行動も、もし「政治家は国民に選ばれた人なので、間違ったことは言わない」というイメージができあがっていたらどうだろう。揚げ足を取られるようなこともなく、何人もの大臣が辞任したりしなかったかもしれない。
 ビジネスの世界でも、人を見るときは先入観を排除し、自分が見られるときは、先入観をもたれないように、持たれても「良い」先入観であるようにしたい。