【第86号】心・技・体のバランス

1. なぜ意識しないのか

 よく「心・技・体」のバランスを取れ、ということを聞く。しかし、多くはスポーツや武道の世界にとどまる。これはビジネスマンの世界でも有効である。
 最近気になるのが、この3つのバランスが崩れている管理職が多いということである。「技」の部分は日常業務の必要性からほとんどの人が取り組む。モノづくりの技能であったり、商品知識であったり。しかし、その他の2つがいけない。「心」の部分である、精神面における強さ、豊かさが未熟であったり、部下を受け入れる大きさの心が準備できていない。「体」の部分である、健全な身体、体力が充実していなかったり・・・。
 健全な肉体に健全な精神が宿る。その土台がしっかりしていないと技は身につかない。それがあまりにも意識されていない。

2. 固有技術への投資

 「技」の部分であるが、これも中途半端な取り組みにしない。まず、集中的に実施する期間を作る。だらだらと取り組んでいても効果はあがらない。そして一定レベルまで到達したら、少しずつ継続的に実施できる内容へとシフトしていく。
 固有技術は、会社の「核」となる部分でもある。ここのノウハウの蓄積を社員任せにしていてはいけない。しっかりと会社全体でフォローする仕組みが必要である。
 技能コンテストなどのアウトプットの場や、改善活動を見える化するためのQC活動なども有効である。社員の競争意識を芽生えさせ、成果に対しては全員で褒め合う。お互いをリスペクトする社風を作っていく。

3. 心と体への投資

 「心」の部分の教育は難しい。しかし放置することもできない。職場に社員がいる以上、それが一人であれ、複数であれ、心の問題は生じる。まず、点検しなくてはいけないのは、わが社には、拠り所になる「理念」があるのか、信頼できる経営幹部、社員がいるのだろうか、という点。そして、組織がそれらを中心に統一感があるかどうか。
 育成メニューとしては、リーダーシップ強化、コミュニケーション力向上に力を入れ、社員同士が互いの苦しみや痛み、悩みに気づき解決し合う風土を作っていくことである。
 「体」の部分は、健康診断をすればいいのではない。仕事の進め方や休日の取り方など、しっかりと指導していくことが大切である。生活のために残業する、休日を返上する、という働き方では実現していかない。
 ノー残業デーの設置、連続休暇(特に長期連続休暇)の取得の義務付けなどを導入する。休日も計画的取得をしていけば、社員の段取りも向上するし、協力体制も築ける。