【第79号】真実を見る目

1.事実だけを収集する難しさ

 現在、政治の世界も経済の世界も大きく揺れている。政治の世界では、昨年から続く政権交代による余波であったり、経済の世界では、リーマンショック後の不安的な景気の足取りと3月の大震災の影響である。
 「なぜ、この時期に政局なのか」「なぜ、この時期に増税なのか」「なぜ、この時期に・・・」
という疑問が沸いてくる。しかし、それは事実を押さえきれていないからなのである。世の中、偶然も多いが、人間のやることの多くは「必然」なのである。何か理由があるからである。それはテレビや新聞が報じる「自己保身」ばかりではない。
 政治家は何を考えているのかわからない、という人の多くは、政治家の書いた本を読んでいないし、マニュフェストも読んでいないし、政治家の活動報告も読んでいない。
 情報は目や耳に入ってくるものだけでは、事実を収集できない。自ら行動して集めて初めて事実を知ることができる。

2.判断することの難しさ

 その事実を収集して、どうそれを判断するかも難しい。「良いのか」「悪いのか」言い切れないものがある。自分たちが、その事実に基づいて「何をすべきか」迷うものも多い。
 政治の問題も、政治家を選んでいるのは自分たち自身なのである。しかし、気が付くと「こんな政治家を選んだのは誰だ」になっている。身の回りの問題も、「自分」を主語にしていないことが多い。問題が解決しないことの多くは、「自分以外の誰かに責任があって、その誰かが解決してくれるだろう」という無自覚な他責論になってしまうからである。
 しっかりと自分たちを当事者として、その立場から判断して行動すべきなのである。

3.多面的なものを見る目

 TVや新聞は便利である。待っていれば、情報を入手できる。しかし、受身で入手した情報には、発信者の意図が反映されてしまっている。都合が悪いものは発信されない。今回の原発事故における情報発信の問題は、都合の悪い情報の公表のあり方であった。三現主義(現地・現場・現実)の重要性である。
 そして、あらゆる角度から物を見る目を養う。「原発は本当に必要なのだろうか」「消費税は本当に上げなければいけないのだろうか」「本当に新規顧客の獲得は無理なのだろうか」、先入観を排除して、考えることが必要である。
 多くの情報収集ルート、現場からの情報をすばやく集約し、その情報を生かすために迅速な判断をすることが必要となる。うわさや流言などに惑わされないためにしっかりと真実を見極めたい。