【第292号】行動できない人

1.本当はわかっていない?

 決めたことを実行できない、実践できない人は多い。「やれるか?大丈夫か?」と確認しても「大丈夫です。やります」という回答が返ってくる。しかし、結果として実行されない。なぜなのだろうか。理由には、大きく3つに分けられる。1つは、やり方をわかっていない場合だ。こう答えてしまう理由は「本当にわかっていない」というケースと、「わかっていないのに、わかっていないと答えられない」というケースがある。後者のケースは意外と多い。子供のころから、「わかりません」と答えてはいけないと教え込まれてきているので、なかなか直らない。上司としては厄介なケースである。「わかりません」と答えると、怒られる、バカにされる、などのマイナスのイメージが出来上がっているからだ。

2.最初から諦めている

 もう1つの理由は、「最初から諦めている」場合である。「やってもムダだ」「やっても意味がない」という目的自体を否定しているケースや、「自分にはできない」という限界を作っているケースなどがある。余計なことをせずに、今の仕事を一生懸命にやることで、ごまかそうとする。何も仕事がない人にはできないが、ルーティンの仕事を抱えていると、こういう思いになりやすい。“言い訳”が用意されているからだ。このケースも、自分の思い込みがハードルとなる。前述の「わかりません」と答えるとバカにされる、と同様に、この思い込みを排除(置き換え)してあげないと、このパターンもなくならない。「やったらできる」「不可能はない」「自分にもできる」という状態にしてあげないといけない。

3.本音はやりたくない

 3つ目の理由は、「本音はやりたくない」というものだ。これは自分で決めたことではなく、他人に“決められたこと”だからである。もしくは、他人に決められたことを自分がやることに納得していないためである。「なんで私がやらなくてはいけないのだ」と思っていたら、嫌々やることになる。もしくはやらない。「腑に落ちる」という言葉があるが、まさしくその状態になっていないために、真剣になれない。
 いずれの場合も、実行されない、もしくは実行されても効果は見込めない。だから実行していない社員や、実践できない社員に「決めたことはやりなさい」と言ったところで効果がないのである。上記のやれない理由を無くしていくのは簡単ではない。しかし、部下の話しに耳を傾け、「なぜ」を突き詰めていけば、必ず理解し合えるのである。