【第276号】アウトプットのエネルギー

1.話し手と聞き手

 コミュニケーションについてのコラムでも触れたことだが、話し手と受け手のリズムというのは、同じレベルであることが理想で、これがずれているとどちらも不快に感じるため、話し手は話しづらいし、聞き手は聞きづらい状況になる。つまり、お互いが同じテンションでいる必要がある。1対1のコミュニケーションならこれも簡単だが、1対多の場合は、易しくはない。どこに合わせるのかが問題になる。話し手が「掴み」と呼ばれる聞き手の気持ちを掴む状況が重要なのは、こういうところからきているのだろう。グループで話している時に、流れに乗れないと、いつまでもつまらない状況になるのも同じ原理である。輪の中に、そういうことに敏感な人がいると、全員が会話に参加できるのだが、自分勝手なメンバーだけだと、疎外感を感じるメンバー何人か出る。

2.受け皿をどう整えるか

 聞き手の受け皿づくりは大切な要素だ。「掴み」だけでなく、研修などの「アイスブレイク」が重要なのもそういった理由だ。参加メンバーの「受け皿」を整えてあげないと、講演も研修も参加メンバーの心の中に“沁み込んで”いかない。講師やコーディネーターの独り相撲となる。そういう意味では、アウトプットする側のエネルギーは大事。コントロール出来るだけのエネルギーがないと、その日の体調次第になる(笑)。最近は、研修前の
「心構え」から入る研修も実施することが増えた。講演や研修で変えていくのではなく、講演・研修で劇的に変えるための受け皿(下地)を作っておくのだ。これだけで効果が劇的に変わってくる。

3.信頼と本音

 話し手と聞き手は、信頼関係で結ばれる。それは、1対1のパーソナルなコミュニケーションから、1対多のコミュニケーションでも同じである。講演で、話し手が話しづらくなっていくのは、「自分だけなら大丈夫だろう」という聴衆の一部が、内職を始めるからである。そこには、信頼関係はない。「みんな必ず聞いてくれる」「みんな必ず理解してくれる」という信頼を裏切っているからだ。それが徐々に話し手へのプレッシャーとなり、話すテンションを下げていってしまう。
 信頼関係が成立しないと、話し手は本音で話せないし、本音で話していない内容は、聞き手の心に響かない。悪循環になってしまう。筆者の師匠のひすいこたろう氏はこう言っている「相手を信じる切ることは、自分を信じ切ることになる」。本音で話し合える関係を大事にしよう。