【第320号】プロとしての自覚

1.知人客への甘え

 先日も「プロ」についてこのコラムで触れたが再度、触れておきたい。最近、プロとしての自覚がない経営者(事業主)と遭遇することが多い。個人的には「いい人」なのに、なぜだろうと、考えていた。どうも起業した際の「知人客」への甘えを引きずっているようなのだ。起業した当初は、お客様がいない。よって、友人・知人にお客様になってもらう。これ自体は悪いことではない。しかし、そこで甘えが発生してしまう。お金に対するルーズさ(支払いがきっちりしていない、価格設定が曖昧など)、約束時間に対するルーズさ(約束の時間にいつも遅れ、言い訳が多い)、ビジネスの基本が守れていない(遅刻する際の事前連絡や周囲への配慮)。

2.基準をどこに置くか

 お金をもらって仕事をしている自覚があるのか、疑ってしまうことも多い。自分自身が商品であることに気づいていない。素晴らしいことを言っていても、難しい資格を持っていても、全然信用できなくなってしまう。資格や知識では仕事にならないからだ。その人自身と一緒に仕事をする。そうなると、お金の問題、約束事項、時間管理、すべてが関わってくる。そこがルーズであれば、当然仕事を進めていくなかでストレスになる。自分のチームには入れたくない。仕事のスタンスの基準は、初対面の相手である。一から信用を築いていかなくてはいけない相手に対して、どういう仕事の進め方をするのか。初めて会う相手の約束時間に遅れるだろうか。自分が逆だったら、を考えればわかることである。初めての仕事の支払いを滞らせる相手と継続取引はできない。

3.プロの仕事としての対価

 プロの仕事の対価は、決められたお金以上の金額を支払いたくなるものなのである。相手が「損した」「高かった」と感じるようでは、プロ失格であり、リピートはない。つまり、仕事の満足度に対して支払われるものであり、金額に不満を感じられるようでは、プロ失格なのである。また、決められた時間を平気でオーバーする方もいるが、あらかじめ断ることが必要だ。オーバーするということは相手の時間を予定外に奪っていることになる。多くの時間を使っているのだから、許してもらえるだろう、ではない。事前に面談時間や講演時間は決められている。それきっかりに用意するのがプロである。「けじめ」がない場合が多いのが目立つのは、そこに「甘え」があるからだ。モノ売り、モノ造りのプロとしての自覚・覚悟が重要となる。