【第313号】届かない声

1.お客様の声

 自分たちの信念をどこまで貫くか、そしてお客様のニーズをどこまで聞き入れるか。これの両立が難しい時代になった。信念は「理念」として大事にしていかなくてはならないものであり、ぶれてはいけないものだが、どうしても売上を上げる、利益を上げるという目的の前にかすんでしまいがちである。そして、時にはクレーマーと化すお客様の要望。我がままにも聞こえるお客様の声をどこまで取り入れなければならないのか。この葛藤は、先を見据えて事業を展開していないと、いつまでたってもなくならない。日々の業務に埋没してしまっていると、理念が忘れられ、お客様の声とマッチしなくなり、クレームを生む。一流企業と言われる「ブランド力」を持っている企業ほど、お客様の声が届かなくなって問題を起こすようになっている。

2.主催者の声

 日々、様々なイベントや催しものが行われているが、集客に苦しんでいるものは多い。内容や企画が悪いわけではない。イベントや催しものの内容が伝わっていないだけでなく、主催者の想いも伝わっていない。必要な人に届いていないことが多いのだ。消費者は、「価値」にお金を払う。だから、イベントの中身も重要だが、それ以上に主催者の想いがそこに加わり、価値を創造しなければ人は集まらない。イベントの中身に求心力がある(有名人が参加するなど)場合や、主催者に求心力がある(有名企業が主催する)場合でないケースほどそれが重要になる。水面のさざ波と同じで、ひとつ波紋が起きれば、周囲に伝播していく。そういった起点になるものがないと、水面はいつまでたっても静かなままなのである。

3.弱者の声

 社会には、様々な強者と弱者がいる。そして、それぞれの世界の中にセーフティネットの仕組みがないと、弱者が救われることがない。それが生活弱者の場合は、命の危険すらあるのだ。しかし、競争社会の行き過ぎたひずみのお陰で、様々な弱者の声が必要なところに届かなくなっている。弱者を救うには、コストがかかる、というのが権力者の言い分なのだろうが、本当だろうか。そして、それをコストと言うべきなのだろうか。コストがかかるから善意・ボランティアに頼る、でいいのだろうか。そこには、自分たちは弱者にはならない、というクレームを起こす大企業にあるような奢りがあるように思う。組織のリーダーは人の痛みが分かる人物でなければならないと何度も指摘しているが、それはここに通じているである。