【第279号】受け入れる心

1.自分と異なる考え

 人は自分の意見を受け入れて、認めてもらいたい。「そうでね」と言ってもらいたいものだ。意見を認めてもらうことが、自分の存在を認めてもらった、に繋がるからだ。自分でそうは思っていても、他人の意見を受け入れることはなかなかできない。理由のひとつに、受け入れることがどういうことかがわからないというのがある。人の話しを「聞く」と人の話しを「受け入れる」は違う。人は、話しを聞きながら「判断」を入れてしまう。「良い」や「悪い」、「損」や「得」、「好き」や「嫌い」など。こういう聞き手の判断を入れてしまうと、受け入れられなくなってしまう。話し手がそこで思考を止めてしまうからだ。その先には、進まなくなってしまう。ここが難しい。本当の想いに届かなくなる。

2.自己主張

 自分の気持ちをどう表せばいいのかも、わからない人が多い。本当の「自己開示」ができている人は少ないものだ。どこまで話していいのだろう、と躊躇っている場合もあるが、多くは、自分の本当の想い(そのほとんどは、辛い体験から来ている場合で、自分が再びその想いをしたくないため、その場面や感じたことを「封印」してしまっているからだ)に気づいていない。何かに悩んでいる場合、何かをやりたい場合、様々なケースがあるが、相談を受けていて、「そこじゃないなぁ」と感じるのだ。表面的な「自己主張」はできても、本質的な部分では自分を出していない。社員研修などの場でも、「それは“建前”で、“本音”は違うところにあるな」と思うことがある。自己主張なんて、誰でもできると思っているかもしれないが、できていない人の方が多いのかもしれない。

3.感謝の気持ちで向き合う

 相手のことを受け入れることができるようなるためには、自分を変えることが必要になる。相手への「信頼」がないと受け入れることができない。それも中途半端では受け入れられない。そして、自分自身に「感謝」の気持ちが必要となる。相手への感謝だけでなく、周りの人すべてに感謝する気持ちだ。「関わってくれてありがとう」「話しをしてくれてありがとう」と思う。自分の気持ちが穏やかになると、相手へ向き合う気持ちも変わる。家族だけでなく、同僚や上司部下の間でも必要なことだ。心の病は一向に減らない。話しを聞いてくれる人、受け入れてくれる人が増えないからだ。隣の人と真剣に向き合えているか、受け入れる心の準備はできているか。全員が考えてみる必要がある。