【第355号】先送りは決断ではない

1.優先順位は

 せっかくやる気になったのに、その「やる気」をそぐ出来事は沢山起きる。自分の周りにも自分の中にも。多いのは、周囲からのアドバイスという名の邪魔である。「辞めときなよ」「今、やらない方がいいよ」。当事者から、その理由を聞いてもはっきりしないことが多い。アドバイスしている人も“なんとなく”なのである。税理士などの専門家からアドバイスされることもあるが、「税務上のメリット」のみでアドバイスしていることがある。事業をスタートするタイミングやライバルとの関係からではないのである。筆者側の「経営」という視点からすると、首をかしげるアドバイスも実際は多い。国家資格を有して、クライアントの信頼を得ているだけに罪深い。

2.3大理由

 「先送りの決断」に至る3大理由がある。「人材がいない」「時間がない」「お金がない」つまり経営資源の不足である。そこに経営者としての最大の失敗があるのだが、先送りの決断は更に失敗の上塗りをしてしまう可能性がある。そういう経営者には逆に質問したい。「それではいつ、それらの条件が満たされるのでしょうか」と。これまで何年か経営をしてきた者ならわかるはずである。そんな瞬間は訪れないのだと。優秀な人材は常に不足している。社長や幹部、そして何かを任せようと思う社員は常に忙しい。そして、お金が有り余っていることなど基本的にはない。これらの理由を先送りの言い訳にしている限り、「やる」という結論には至らないのである。全てが結果ということ。この3つの理由の原因を知ることが必要となる。

3.何が大事なのか

 今、自分が何をすべきか、それに気づいているだろうか。コンサルティングをしていて、その意味がわかっている経営者は少ない。私たちコンサルタントが何のために、次回打ち合わせ、次回プロジェクトまで宿題を出しているのか。コンサルティングの進捗スピードを担保することが第一目的ではないのである。経営者は真剣に「やる気」があるのか、実行する気があるのか、を確認しているのである。前述の「言い訳」が出始めたら要注意。これは、社内の改善活動や日々の業務にも当てはまる。社長の指示に、幹部が「言い訳」したら、それは「やりたくない」というシグナル。「なぜ、やりたくないのか」がポイントである。先ほどの事例のように、そばにいる人物が影響している可能性もある。やると余計な仕事が増えるという先入観もある。今やる、という決断は重要である。