【第174号】持つべき鏡

1. 経営者の鏡

 自分自身を振り返るためには、人はそれぞれ「鏡」を持つ必要がある。特に経営者は、自分自身で鏡を持っていないと、何か自分を改善すべき点があっても、社内ではなかなか指摘してくれる人がいないからである。
 まず、耳の痛いことを言ってくれる人を確保することである。身内であることも多いが、できれば第三者であることが望ましい。身内だと甘えが出てしまう。また、第三者は社外である方が良い。処遇と切り離して進言してくれるからである。
 また、自分と同じぐらいの年齢の経営者の友人、同じような立場(先代との関係や、ブレーンの状況、会社の規模など)の経営者の友人を持つ。いい意味でのライバル関係にもなれるし、アドバイスを得ることもできる。若い経営者であっても、経済団体などに加盟することもあるだろうが、遊び友達に終始することなく、お互いを高め合える関係になることである。

2. 幹部の鏡

 幹部は「率先垂範」することが重要な役割。部下の悪い見本にならないようにしなければならない。まずは、社内に幹部同士のネットワークを構築する。同じ立場の鏡である。様々な情報交換から、常にベストのマネジメントを目指さなくてはいけない。
 経営者だけでなく、幹部も社外にネットワーク(人脈)を構築しておかなくてはならない。それは肩書きだけで“勝負する”ような人間力では、現代においては部下指導育成をしたり、厳しい環境で業績をあげるリーダーシップを発揮することは難しいからだ。
 社外ネットワークはまず積極性が求められる。社内である程度の立場になると、姿勢が「守り」になりがちである。待っていても部下や取引先からコミュニケーションを取ってくれるからである(報連相でも上司は待っていることが多い)。社外はそれでは通用しない。そういう「場」に出て行くことが必要だし、その場で積極的に声がけすることが求められる。そして社外に100名以上の人脈を構築する。彼らとの関係は素晴らしい鏡となる。

3. 社員の鏡

 社員はまず自分自身で日々振り返る習慣を作ることである。以前もこのコラムで指摘したが、日記をつけることは効果的である。振り返ることで、まず自分の課題を明確に認識することができる。また、書くという行為により、自分を客観的に見ることができる。冷静に判断できるようになる。
 また、これを営業日報や作業日報で行えば、上司・先輩のチェックやアドバイスを受けることができる。
 立場により必要な「鏡」は違うが、それぞれしっかりと用意し、自分を見つめ直していって欲しい。