【第347号】本当のブラック企業とは

1.労働時間だけか

 電通での過労死の問題から、ブラック企業の問題がクローズアップされている。この問題は、今に始まったものではない。残業時間の制限や、サービス残業問題は、2000年に入ってからますます指摘されるようになっていたものだ。しかし、なかなかこれまで改善されないで来てしまった。今回のことでしっかりと見直されることは喜ばしいことである。しかし、ブラック企業は本当に労働時間だけの問題なのだろうか。残業ゼロの会社であっても、社員が「行きたくないなぁ」と感じる企業は、決して「ホワイト企業」ではない。定時で退社できるような会社であっても、今のままでは多くの企業がブラック企業のままとなる。

2.空気がブラックな企業

 正社員にしろ、アルバイトやパート社員にしろ、会社を辞める大きな理由は、職場環境と人間関係である。長時間労働ではない。常に上司や先輩から責められたり、罵倒されたりするパワハラや、誰ともうまくコミュニケーションがとれない人間関係のトラブルなどが、無くならない限り、定着率は上がらない。職場の空気がブラックなのである。こういう企業は、労働時間の問題が解決したところで好ましい職場、会社とは言えない。また、こういう企業では、退社は早くても、仕事を持ち帰ることになるし、24時間上司との連絡が取れるように携帯電話の電源も落とせない。会社にはいなくても、精神的な束縛時間は永遠に続いてしまうのだ。表面的な労働時間の問題ばかりがクローズアップされると、こういった問題が放置されることになりかねない。

3.使い捨てなブラック企業

 そして、もう1つ課題なのが、人材育成である。社員を使い捨ての「コマ」としか見なさない企業もある。社員の換えなどいくらでもいる。だから「育成」などにお金や時間などをかけるのはムダだという会社である。様々な企業で社員教育は「投資」です、という話しをさせていただくが、こういう会社では削減すべき「コスト」としか捉えない。当然、給与も低いし、上がらない。一部の稼ぎ頭以外は、「穀潰し」なのである。
 いずれのブラック企業も永遠には続かない。社員は機械ではないからである。我慢の限界がくれば、去るしかない。アルバイトに反乱を起こされた牛丼チェーン店もあった。社員が幸せでない企業に成長はない。社員が毎日楽しく出社しているか、働いているか、自分たちの子供を入社させたいと思っているか、チェックすることも重要である。